2018(平成30)年11月グリーフワークかがわ
ニュースレター第175号(HTML版)

2018(平成30)年12月8日 グリーフワークかがわ広報部

~2018年度グリーフカウンセラー基礎講座を終えて~


2018年も終わろうとしていますが、当年度のグリーフカウンセラー基礎講座を振り返ってみたいと思います。

さて、今年は参加者が14名、講師陣は10名であり、また、新たな試みとして、コーディネーターを配置して臨みました。今年のテーマは、昨年度と同様、「喪失体験」、「家族の死」「自殺」「末期がん患者」「子どものグリーフワーク」「カウンセラー自身の悲哀」等でした。担当した各講師は、自分の与えられたテーマについて企画し、参加者とともにグリーフについて実践的に学べる講座となることができたのではないかと思っています。また、参加者も、学生から僧職、保健師、看護師等幅広い職種の人に参加いただき、それぞれの実践の場においても、グリーフを考える材料になったのではないかと思っています。

講座は、最初にグリーフに関する理論、そして、家族、自殺、末期がん、こどものグリーフについて実践的なロールプレイを行うとともに、最後にグリーフケア、カウンセラー自身の悲哀でまとめました。毎回、テーマが異なり、参加者の皆さんは消化していくのが大変だったかなと思いますが、クライアント、カウンセラー等を経験することにより、グリーフに関する理解を深めることができたのではないかと考えています。

私は、グリーフカウンセラーは、プロフェッショナル若しくはボランタリーであることを問わず、こころの支援に携わる人が保持すべきカウンセリングマインドとしてあるのではないかと思っています。そういう意味で、今回、幅広い人々に参加いただけたのは、講座を企画したスタッフの一人として、うれしい限りです。

また、今年、久しぶりに講師をして、改めて、人生における喪失の意味を再認識させられてしまったかなと思います。身近な大切な人を亡くすことは、自分自身を喪うこと、自分の将来を喪うことでもあります。この衝撃的な事実を受け止め、人生を再び、歩み始めて行くには、亡くなった人への思いを断つのではなく、その人を自分の人生においてリフレーミングし、今までとは異なるかたち、役割でパートナーとして位置づけ、共に人生を歩んでいけるようになることが必要ではないかと思います。

「喪失の悲しみを乗り越えて」とよく言われますが、私は「喪失の悲しみは消えないけれど、大切な人と共に生きていく」と実感できることが大切でないかと思っています。

最後に、この講座を担当した講師陣、また、参加者の皆さん、本当にお疲れ様でした。

ありがとうございました。


グリーフカウンセラー  池島 邦夫



◆リビングwithグリーフ◆


余命と付きあう

花岡 正憲


姨捨山伝説を題材とした『楢山節考』(深沢七郎著)は,食料不足が深刻な部落の因習に従い,年老いた母を背板に乗せて真冬の楢山へ捨てに行く短編小説である。信州のある貧しい村の年寄りは70歳になると口減らしのために「楢山まいり」に行く掟がある。69歳になった母親おりんは,村人の盆踊りの歌に「楢山まいり」が近いことを感じつつ,その日を待ち望み,従容として死地に赴く。社会文化的余命を自覚し,自分の死を受け容れる物語である。

厚生労働省が発表した2017年の「簡易生命表」では,70歳の平均余命は,男15.72,女19.98である。因みに日本人の0歳児の平均余命すなわち平均寿命は,女性が87.26歳,男性が81.09歳で,いずれも過去最高を更新した。100歳を超える人は過去最高の6万人超で,平均余命は,男1.89 ,女2.45となっている。人は余命を生きているわけであるから,すべての人にとって自分に残された時間をどのように生きるか考える上で参考になる数値ではあろう。

こうした統計数値とは別に,がん治療現場では,余命が宣告として伝えられることがある。余命6か月と宣告されたが,6年元気で生きている,と言った話を耳にすることがある。予想がはずれ長生きできて良かったでは済まない問題だろう。「宣告」と言う文字通りの言葉が使われないにしても,例えば「来年の桜が見れるように頑張ってみましょうか」と言った医師の言葉が,余命宣告として受け取られることだってある。

楽観的ではなく悲観的な言い回しをしておいた方が無難だという医師の思いもあるのだろうが,その分患者に重たいものを抱え込ませてしまう。がんについての説明は,全治何か月と期限が定められる病の治療とは,コンテクストが基本的に違ってくる。悪い知らせ(bad news)の伝え方が問題になる分野である。

医療従事者は,患者や家族の価値観や生活信条などを理解し,それに沿った医療を行うトレーニングを受ける機会が少ない。そうしたことから1980年代に,精神腫瘍学(psycho-oncology)と呼ばれる新たな分野での取り組みが開始された。患者と家族の置かれた心理社会的状況を踏まえその意向を尊重しQOL(生活の質)の改善を目指す研究・実践領域である。

医師は,預言者ではない。医者は何でも分かっていて,患者のすべての疑問に答えられるとは限らない。しかし,患者は,一般論ではなく,自分の病について知りたい。だからこそ医師は分からないことも含めて,知り得る限りの情報を提供して欲しい。自分の病の事実を知っておきたい。それが本来の患者心理であろう。

生きることだけを前提とした医者頼みのQOLの向上だけでなく,生きるための理由と死ぬための理由とが冷静に測られた上での「意志的な死(mors voluntaria)」,すなわち自殺ではない本来の「自死」を選択肢の一つとして考えることもあろう。余命を宣告されたくない,生死を含めて自分で決めたい。安楽死や尊厳死もそうしたところにある。

医師から余命を告げられることが嫌で,期待と不安が交錯する中で,いたずらに医療につなぎとめられ,健康寿命を損なっていくことだけは避けたい。人生100年時代,自らの死を人生に取り入れ,スピリッチュアルになることは,なかなか難しい作業になっている。


(グリーフカウンセラー 精神科医)
2018・11・26



◆グリーフワークかがわ公開セミナー第35回のご案内◆


  • 第35回公開セミナーチラシイメージ

日 時:2018年12月16日(日)13時00分~14時30分

会 場:丸亀町商店街カルチャールーム

講 師:瀬尾 憲正(せお のりまさ)(開業医在宅療養支援診療所院長グリーフワーク認定カウンセラー)

テーマ:在宅での看取り


【内容】

住み慣れた環境(自宅)で暮らし続けて、「終末期」ではなく、「終生期」を過ごすためには、家族の方々だけでなく地域の人々の協力も必要です。
そして、「生きて、逝く」在宅での看取りでは、「ありがとう」「許してください」「赦します」「愛しています」「さようなら」の5つの言葉を贈りましょう。


~2018年度公開セミナーの開催日程~

回数 開催日 講師 テーマ
第34回 2018年
11月18日(日)
13:00~14:30
溝淵 由理 被災後のグリーフワークとグリーフケア
第35回 2018年
12月16日(日)
13:00~14:30
瀬尾 憲正 在宅での看取り
第36回 2019年
1月20日(日)
13:00~14:30
上野 美幸 大切なものを失った子どものこころ
第37回 2019年
2月17日(日)
13:00~14:30
中里陽子
ローマ真由子
「小さな命を想うとき」
~ペリネイタルロスのグリーフを通して~
第38回 2019年
3月3日(日)
13:00~14:30
夛田 敏恭 自殺と自殺予防(仮)
  • 会場:丸亀町商店街カルチャールーム(高松市丸亀町1番地1 壱番街東館4階)
  • 参加費:500円(当日会場でお支払い下さい)
  • 企画運営:認定NPO法人 グリーフワークかがわ
    電話090-6288-1011
  • どなたでも参加できます。事前予約不要



◆2018年11月11日 第125回理事会◆


《審議事項》

第1号議案

2018年度上半期会計報告に関する事項

会計担当者から預金の部,小口現金の部,寄付金について上半期会計報告がなされ了承された。

第2号議案

2019年度香川県地域自殺対策強化事業に関する事項

香川県からの照会に対し10月末に2017年度と同様の内容で回答している。予算案作成のための具体的な計画を審議し,昨年度同様の相談事業,個別相談,電話相談(ヘルプライン,ホットライン),人材育成(実務者研修)を行うことで了承された。

第3号議案

認定カウンセラーの資格更新に関する事項

第124回理事会で承認された認定規則の改訂に伴い,資格更新手続きの要項案が理事長より示され,「グリーフワークかがわグリーフカウンセラー資格認定規則」「研修等実績報告一覧表2021年度資格更新者用」の一部文言を訂正することで了承された。「ヘルプライン資格認定規則」(改定案)については,「グリーフカウンセラー資格認定規則」(改定案)の「グリーフカウンセラー」のところを「ヘルプラインカウンセラー」と読み替えることとする。

第4号議案

丸亀町カルチャールームの使用料に関する事項

第124回理事会からの継続審議として,来年度の丸亀町レッツカルチャールームの使用料について対応を審議した。理事長と丸亀町商店街振興組合理事との協議の結果,振興組合から提案のあった月額で支払うこととし丸亀町商店街振興組合に理事長から改めて回答することで了承された。

第5号議案

バリア―フリーの会場確保に関する事項

当法人が主催する会議や行事の会場のバリアフリーの会場の確保の必要性について,第124回理事会と第72回認定カウンセラー会議での審議後,理事会会場については当面高松市男女共同参画センターもしくはGWK相談室を使用する予定としたが,今後のセミナーや会議の会場については認定カウンセラー会議で審議を継続することとした。

第6号議案

新書籍発行に関する事項

新書籍について第1稿が仕上がり,印刷の見積もりが1,000部で約17万円となることが理事長から報告され価格の設定について検討された。税務対策として考慮すべき事項について確認後,改めて審議することで了承された。

第7号議案

平成30年度香川県共同募金会助成事業テーマ募金に関する事項

チラシ作成と発送,周知に関するタイムスケジュールと発送先について審議を行い,趣意書及び協力依頼文書を作成後,会員への直接の説明会と発送作業の実施を決め,発送先については前年度のリストをもとに公開セミナー参加者,新規会員を追加することで了承された。

第8号議案

NPO法人設立10周年記念行事に関する事項

2019年は当法人がNPO法人設立(2009)から10周年となることから記念行事を企画することとし,次回の認定カウンセラー会議で希望者を募り実行委員会を立ち上げること,記念行事は丸亀町レッツホールを会場とすることが提案され,テーマ募金と時期を同じくする2020年2月を会期とすることで了承された。

第9号議案

セミナー等での講師育成に関する事項

第123回理事会第4号議案での決定事項をもとに,今後外部講師派遣等を積極的に行い,地域への貢献とグリーフワークの普及啓発を目指すことは重要であると考えられ,講師のレベルアップを目的とした勉強会をたちあげるなど来年度の人材育成事業に含めることで了承された。

第10号議案

会計業務に関する事項

来年以降の会計担当について今後も随時審議予定とすることで了承された。



◆2018年11月18日 第73回 認定カウンセラー会議◆


  1. 認定グリーフカウンセラー資格認定について
     2018年度グリーフカウンセラー養成講座・基礎コースが終了し,グリーフカウンセラー資格認定の申請を開始していることと,今後のスケジュールについて報告された。
  2. 平成30年度香川県共同募金会テーマ募金について
     1月1日から3月31日の期間,「大切な人をなくした子どもの悲しみを支援するプロジェクト」をテーマに募金活動を行うこととスケジュールについて説明があった。
  3. NPO法人設立10周年記念行事について
     シンポジウムの開催を企画するため実行委員会を立ち上げていくこととなった。
  4. カウンセリングの現場での状況報告と課題について
     認定カウンセラー会議のあり方について議論が行われた。この会議は,実務者の研修の場であるとともに,新たにカウンセラーになる人をフォローし,地域のニードに応じた適切な支援が提供できる態勢を継続するための議論の場である。この会議の原点に立ち戻り,活発な議論の場にしなければならないことを改めて確認した。


【勉強会】


使用文献:
使用文献:「子どもの悲しみによりそう・喪失体験の適切なサポート法」
ジョン・ジェームス、ラッセル・フリードマン、レスリ―・ランドン著
水澤都加佐、黒岩久美子訳
2014年大月書店

担当:吉田亜紀子
範囲「パート4第21章から第25章」

解説の概要:

パート4 発見から完結へ

発見は完結ではないとこの本では書いてある。

では発見とは何か。本では、「切望していることを見つける」、「言う機会がなかったことを色々と思い出す」とある。

つまり、私たちが言ったこと、あるいは、もっと上手に多くこうすれば良かったなどの切望を見つけ出すことである。そして、発見で終わってはいけないと本では述べられており、発見したら次は完結に向かいましょうとある。

では、完結とは。子どもたちに物理的に「さようなら」を言うことができるようにすること、と本には書いてある。その方法は一人一人様々であるが、言語化し第三者に聞いてもらうことが大切であり、手紙や「さようなら、ありがとうね。」と子どもたちが言葉を発すること、その際、大人達が、喪失に直面した子どもたちと共にきちんと見守ることだと考える。

そして、今回の勉強会では、主に、この本のチェックリストの実践的な使用方法についてディスカッションが行われた。

今回のパート4では、出来事に関するチェックリスト、親しい人の死に関するチェックリストが挙げられている。どう使用すればよいのか。危険性はないのか。参加した会員より複数の質問が挙がった。

今回は、チェックリストの使用方法について花岡会員よりお話を頂くことができた。

本人がチェックリストを実際に使用してもしなくても、手にすることで、本人の気づきを促す。観察自我を養うためのものであると学ぶことができた。

次回の勉強会は,今回と同じ範囲。パート4 第21章から第25章、吉田が担当する。次回は、深い悲しみからの回復のための特別な手紙に焦点を当てて行う予定である。