2018(平成30)年9月グリーフワークかがわ
ニュースレター第173号(HTML版)

2018(平成30)年10月11日 グリーフワークかがわ広報部

~第2回高松市自殺対策推進会議及び香川県自殺対策連絡協議会の報告~


8月20日に第2回高松市自殺対策推進会議が高松市保健センター会会議室にて行われました。まず、6月5日に行われた第1回目の会議で出された、高松市の自殺対策についての意見に対する回答が示されました。主な内容としては、周知啓発の遅れや、予防の仕組み作り、相談に対応する体制の早期確立を目指していくとの方針を示していました。各団体の自殺対策の取り組みについて紹介の後、高松市自殺対策計画(仮称)の素案の説明がありました。国の示す大綱に沿った計画で、5つの基本方針と12の重点施策を説明されました。各機関・団体が行うことがどこに関係するかを振り分ける形であり、どのように連携をし実施していくのかまでは踏み込めなかったけれど、各組織が行なっていることを認知することで新しい機会が生まれてくることを期待しています。

また、9月6日には香川県自殺対策連絡協議会が県庁会議室で行われました。同じように香川県における自殺の状況説明、対策計画と実施状況の説明、それぞれの組織の対策の取り組みについての説明が行われました。

香川県と高松市の会議に参加して一番の疑問点は、相談窓口を広くすることは非常に良いことだとは思うが、対応する人材はどのような訓練・教育を受けているのかです。実際には「今から自殺・・・」という電話はかからない窓口もあると思いますが、誰が受けるかわからないのなら、最低限の対応知識があれば安心できるのではないでしょうか。各団体や機関では、個々に講演会・講習会を開催していますが、それを共催することにより、今まで聴く機会のなかったテーマや知識を得ることができます。民間団体では、講演会や講習会の告知を行うことや、動員などが不十分なために小規模開催がほとんどです。また、相談者やカウンセラー等の人材不足が民間団体では大きな問題です。各自が仕事や立場を持ちながら活動を行なっています。空いた時間での活動ですので、人員の確保が事業の継続になります。連帯・連携・支援は、ここから始めると言うのはどうなのでしょうか。


グリーフワークかがわ副理事長 夛田敏恭



◆リビングwithグリーフ◆


「ごみ屋敷」とぬいぐるみの心理学

花岡 正憲


「去るものは日々にうとし」を関数で表すと,1/tになるという。tは時間である。例えば,いつか使うかも知れないと思って取っておいたものを使う可能性は,時間に反比例すると言うことになる。4,5年着ていない服を近いうちに着る可能性は,1年前から着ている服と比べると低くなる。

後で読もうと思って机の上に山積みされて行く印刷物。テレビショッピングで購入して1,2回使っただけの健康器具。新聞広告で目にとまりネットで買ったが読まれない書籍。処方されたがほとんど飲んでいない薬。孫ができた時のために取っておくベビーチエアやベビーベッド。かくしてものは溜まって行く。

置いておけばいつか使うかもしれないという発想は,合理性よりも情緒的要素の方が大きい。

ごみが野積みの状態で放置されたごみ屋敷が地域社会で問題になることがある。外で拾ってきたものも含めて,家の内,外にごみの山ができる。精神医学では,強迫性障害の一類型とされているが,定説はない。

イギリスの小児科医で精神分析家としても対象関係論の領域で広く知られているD.W.ウイニコット(1896~ 1971)は,子どもがストレスを受けた時,拠り所とする馴染みの対象物に注目して,移行対象という概念を提唱した。1~3歳頃に,ぬいぐるみ,毛布,タオルなど,肌身離さず持っている物で,特に不安が高まったときなどに抱きしめたり握り締めたりする愛着対象のことである。汚れているからと言って,親が勝手に片づけたり,新しいものと交換したりすると,子どもはパニックになる。

移行対象は,幼児が分離不安にさいして,欲求不満や不安を和らげるための心理的防衛手段とされる。内的世界と外的世界の中間で現れる愛着対象であるため,「中間領域」とも呼ばれる。ぬいぐるみに象徴されるように,移行対象は,「慰めもの(soother)」として,心的緊張場面で, 内的世界と外的世界を橋渡しするという重要な役割を果たしていると言われる。

移行対象は,乳幼児が現実を受容して行く過程における母親の象徴的代理物として,他のものには替えがたい特別な物である。子どもは,自立心が育っていくに連れ,移行対象を手放し,現実の世界と安定した相互作用ができるようになる。その過程で創造性が育まれるとも言われている。

ごみ屋敷の住人の多くが,比較的高齢で独居または独身で,配偶者との離・死別など喪失を体験している人が少なくないという報告がある。親類縁者とも疎遠で,友人・知人がなく,地域から孤立している。同居の家族がいるとき,ため込んだもので家中の部屋が占拠され,家族が困り果てて相談に訪れることがある。

捨てられないごみが,移行対象と等価の「慰めもの」なのかどうかは分からない。いずれにしても,大人の精神世界に幼児期の起源を見ることはよくあることだ。なかなか断捨離できずそこにあるものが,そのままの姿で,その人にとっては自己と現実世界をつなぐ大切なものになっていることは否定できないであろう。


(グリーフカウンセラー 精神科医)
2018・9・30


◆グリーフワークかがわ公開セミナー第34回のご案内◆


  • 第34回公開セミナーチラシイメージ

日 時:2018年11月18日(日)13時00分~14時30分

会 場:丸亀町商店街カルチャールーム

講 師:溝淵 由理(みぞぶち ゆり)(臨床心理士米国認定カウンセラーGWKかがわ顧問)

テーマ:被災後のグリーフワークとグリーフケア


【内容】

西日本豪雨のように突然襲う災害。物資だけでなく心の備えも必要です。大切な人やものを失うロスが心身に与える影響とケアの方法をグリーフワークの視点から学びます。


~2018年度公開セミナーの開催日程~

回数 開催日 講師 テーマ
第34回 2018年
11月18日(日)
13:00~14:30
溝淵 由理 被災後のグリーフワークとグリーフケア
第35回 2018年
12月16日(日)
13:00~14:30
瀬尾 憲正 在宅での看取り
第36回 2019年
1月20日(日)
13:00~14:30
上野 美幸 大切なものを失った子どものこころ
第37回 2019年
2月17日(日)
13:00~14:30
中里陽子
ローマ真由子
「小さな命を想うとき」
~ペリネイタルロスのグリーフを通して~
第38回 2019年
3月3日(日)
13:00~14:30
夛田 敏恭 自殺と自殺予防(仮)
  • 会場:丸亀町商店街カルチャールーム(高松市丸亀町1番地1 壱番街東館4階)
  • 参加費:500円(当日会場でお支払い下さい)
  • 企画運営:認定NPO法人 グリーフワークかがわ
    電話090-6288-1011
  • どなたでも参加できます。事前予約不要


◆2018年9月9日 第123回理事会◆


《審議事項》

第1号議案

会計担当との雇用契約に関する事項

契約及び契約書内容について理事会で承認され,近日中に理事長が会計担当予定者と面談し、契約内容を確認した上で問題なければ,契約を取り交わすこととなった。

第2号議案

2018年度公開セミナーに関する事項

主担当から,内容(案)とチラシ作成と印刷,送付方法の案について説明があった。第5回については,三豊市との共催で行うかについて,今後三豊市と検討すること,三豊市との共催になった場合には会場も三豊市内になる可能性があること,またセミナー当日にアンケートを行うことの説明があり,原案どおりで了承された。

第3号議案

2018年度テーマ募金(2019年度事業)に関する事項

本年度も昨年度と同様の内容で回答を送ること、2000枚での募金依頼チラシ印刷の回答案を共同募金会へ提出準備を行う事で了承された。

第4号議案

セミナー等での講師育成及び講演内容のメニュー作りについて

副理事長が主担当となり、今後外部へのセミナー等で講演出来る人材育成及び内容の検討を作って行ってはどうかと提案があり、理事会で承認された。

第5号議案

認定カウンセラーとの雇用契約に関する事項

その年度の支払いが生じた際に新しい雇用契約を結ぶ事で承認された。なお、その際は事業と管理業務に関するそれぞれの契約書を結ぶ事となるが、その内容については理事長が準備し、次回以降の理事会にて諮る事となった。



◆2018年9月16日 第71回 認定カウンセラー会議◆


  1. カウンセリングの現場での状況報告と課題について
     自殺予防土曜ホットラインかがわの報告があり,相談担当者の研修方法について議論を行い,実務者の意見交換,情報収集の必要もあり,次回も継続して検討していくこととなった。
  2. 「特定非営利活動法人グリーフワークかがわ出張旅費規程」について
     規程の見直しを行うよう理事会への上申することとした。


【勉強会】


使用文献:
使用文献:「子どもの悲しみによりそう・喪失体験の適切なサポート法」
ジョン・ジェームス、ラッセル・フリードマン、レスリ―・ランドン著
水澤都加佐、黒岩久美子訳
2014年大月書店

担当:吉田亜紀子
範囲:「パート3第16章」から「パート3第20章」

解説の概要:

完結とは,関係性の変化において伝えられなかった感情を発見し,直接的もしくは間接的にコミュニケートし,感情を対処するものである。完結に辿り着くためには,関係性の見直し,未完の感情の覆いを取り去ること,謝罪,許し,情緒的に重要な言葉,楽しい思い出(四つの感情)のステップを踏むことが完結へと導くとある。

私たちは,子どもたちを完結に導くには,大人がまず,自分を再教育することが重要である。大人と子どもでは感情は違い,そして子ども一人一人も感情や考え方は,一人一人違うことを理解する必要がある。

また,人の死についても本は取り上げている。深い悲しみは関係性から生まれ,喪失を比べてはならない。

その後のディスカッションにおいて,瀬尾会員から死についての考え方の歴史について案内があった。時代により死がどのように扱われてきたか。その点についても,今後,死というテーマを取り扱う上で,改めて学ぶ必要があると私は考えた。

次回10月21日の勉強会は,パート4 第21章から第25章は吉田が担当する。