2021年(令和3年)2月グリーフワークかがわ
ニュースレター第202号(HTML版)

2021年(令和3年)3月3日 グリーフワークかがわ広報部

「とにかく分かって欲しいの!」


あの痛みというのは経験した人にしかわかりません。3年前に椎間板ヘルニアからくる座骨神経痛に悩まされました。はっきりどこが痛いともわからない鈍い痛み。ついには足の先までこれまで経験したこのない大激痛が走り、歩くことも立つことすらもできなくなりました。

いろいろ学んだ今となってはわかりますが、当時の私の症状は明らかに椎間板ヘルニアからくる座骨神経痛。しかしどこの病院に行っても、先生の口から出るのは「何で痛いの?」「運動不足じゃないの?」という素っ気ない言葉ばかり。そして「とりあえず薬飲んどいて。」と痛み止めを処方してくれるだけ。痛み止め飲んでも痛いこの状態を誰か早くどうにかして欲しいの!!

大激痛で立てなくなって緊急搬送された時でさえ、先生は慌てる様子もなく足を持ち上げて「これ痛い?」。痛いから運ばれて来とんねん!別の先生が来てくれたかと思うと、また足を持ち上げて「これ痛い?」何もしなくても大激痛で悶絶してるのわからんか?!もうこれ以上痛くしないで!泣

入院して数時間がたったころでしょうか?何かの用事でベッドに来てくれた看護師さんが私のゆがんだ顔を見て「痛そう…。」と一言つぶやいた瞬間、ようやく少しだけホッとすることができました。そう!!痛いの!メチャメチャ痛いの!!文字通り、【白衣の天使】に見えました。

これも後になってわかったことですが、当時の各病院の先生の診断や対処が悪かったわけではありません。あれだけの痛みがあっても、立てなくても私の症状は緊急手術をするほどひどいものではなく、安静にしていれば、そのうち自然治癒するものです。先生方からすれば、手術するほどでもないし、痛み止めを飲んで自然治癒を待つしかないということなのでしょうが、それでも当の本人が訴えているのは耐え難い痛みを抱えているということです。

健康でいられる時は当り前すぎて何とも思いませんが、健康な体を喪失するということは大きな苦しみ、不安、辛さを抱えることになります。当然、元の状態に戻れる対処法を求めてはいるのですが、その大前提として今回の私の場合で言えば「どうしようもなく痛いんだ!耐えられないんだ!いつ治るの?!このまま歩けなくなっちゃうの?!」と訴えている苦しみをまずは受け止めてもらえることが健康喪失の辛さを和らげる第一歩になるんだと身をもって実感しました。

グリーフカウンセラー 中原大道




《第3回ファシリテーター研修with杉山理事長》


2021年1月25日(月)19:00よりミライエで行われたファシリテーター研修に杉山理事長も参加されました。理事長が参加された事でさらに厚みのある研修になったと思いました。

前半は参加者それぞれの死生観について話しました。

私は子供の時に両親を亡くした事を話しました。自分自身ではグリーフワークは終わっているものと思っていましたが、新ためて話してみるとちょっと涙ぐんでしまったことに驚きました。

後半ではグループミーティングのロールプレイを行いました。 クライエント役をやってみて初めて分かることなど、非常に多くの気づきを得てとても良い勉強になりました。

今回で2020年度のファシリテーター研修は終了しました。講師の池島さんからファシリテーションを学び、体験する事でより多くの気づきを得る事が出来ました。

GWK認定カウンセラーの皆様、2021年度もよろしくお願いします。

コーディネーター 西山忠明




三豊市自殺対策協議会設立準備基調講演会記録

日時:令和3年1月21日(木) 14:00~15:30
場所:三豊市危機管理センター 2階 201・202
GWK出席者:夛田敏恭,ローマ真由子
記録:ローマ真由子


14:00に三豊市自殺対策協議会より開会の挨拶があり,引き続き三豊市の自殺の現状報告があった。三豊市でも全国の統計と同様に自殺者数は前年度比より高くなっており,交通事故での死亡数の約3倍となっている。平成29年~令和元年と令和元年~今年を比べた場合,やはりこの3年での自殺者数は高くなっており,女性の数が顕著に高くなっている。また,60代以上と20代の数も多いとのレポートが福祉課課長より報告された。

なお,三豊市では昨年9月号の広報誌にて自殺についての特集を組んでおり,電話相談の窓口としてGWKも案内している。


基調講演
演題「自殺予防の基礎を学ぶ ~自殺予防のため私たちができること~」
講師 古新町こころの診療所院長 嶋 宏美 氏


診療所院長の立場から,防げる自殺があるのではないか,という観点から始まった。

日本国内での自殺について,文化的な背景がある事も否めないのだが,景気が自殺者数に影響するという関係も明らかにされた。現在のCovid-19の影響による医療崩壊,景気の下降,そこからのうつ状態が引き起こす自殺も多いし,実際,小児科や整形外科の外来者数は激減しているが,心療内科,精神科への外来者数は増えているとの事だった。

自殺の危険因子として,未遂歴や精神疾患の既往があるが,サポート不足という点(一人暮らし,孤立)も忘れてはならず,例え同居者があったとしても,その中での交流がなければ孤立と同じであるため,そこに属する人との関係性がどうだったのかも重要となる,とお話しされた。この点について,グリーフカウンセラーの「寄り添い」が非常に重要であると改めて感じた。また,近年の自殺の報道の仕方について医師会からも引き続き意見していく,という点については二次的な喪失について考えさせられた。

自殺リスクの切迫度についての説明と共に,切迫度が高いと判断された場合は医療機関であれば入院へ,一般であれば警察,家族に保護を依頼する事が適していると強く説明された。

一般的な自殺予防についての解説の後,実際に自分が自殺を打ち明けられた際に具体的にはどうするか,という事について経験を交えて説明された。一般的に言われている対応,いわゆる神話の間違いと,いかに「自分に打ち明けてくれた人へ真摯に向き合うか」というのが大切であるか,という事を実体験や例を併せて説明された。対応の4つの原則として,「聴く」「関わる」「つなぐ」「気づく」という事を,なぜ,どのようにそれが大切なのかを丁寧に説明された。若い人のリストカットを例に挙げ,リストカットをしてしまう本人とそれを心配する親の気持ちのズレや,本人がその原因さえわかっていない事が多く,言葉にならない「モヤモヤがすっきりする気がする」という理由でリストカットをしているというのは,子どもの喪失をサポートする私たちにとって非常に見過ごせない点だと感じた。講師は医師として来院した患者への対応としたお話しをしてくれたが,命が危険にさらされる程の瀬戸際まで来なければ,子どもの喪失に気づけない社会ではいけないと強く感じた。

最後にゲートキーパーの心の健康・ストレスとケアについてお話しされた。ゲートキーパーとしての自分の感情をきちんと感じ取る事が大切で,自分の感情を受け入れる事が重要であるとされた。気持ちを押し殺さずに,自身の感情(びっくりした,何と言ってよいかわからない,などの)は当然の事として受け入れるという事とそれがネガティブな感情であっても「自分を受け入れる」事で,それに合わせてポジティブな感情も入って来易いとされた。自分の気持ちを大切にしてください,という言葉は本当に大切だと思った。また心と共に身体も大切にしてください,心を大切にすることは身体も大切にしています,とお話しされた。そして自分へのねぎらい,感謝を忘れずにという言葉で締めくくられた。

15:15より質疑応答があり,各方面からの実体験からの質問と,今後の自殺協議会への希望が述べられ,講師と三豊市福祉課からそれぞれ回答があった。


防げる自殺があるのではないか,という点から始まった講演でしたが,具体的な対応や事例を聴き,【グリーフワークとは大切な人やものを失ったときに訪れる悲しみや痛みを抱え込まず,自分にあった方法で表現し,新しい生き方を見出していく過程】の大切さを改めて感じました。また,グリーフワークがまだまだ知られていない現状で,私たちがNPOとして行うミッションの大切さを痛感し,今後もグリーフワークの普及・啓発に努めて行こうと思いました。



令和2年度NPOマネジメント講座を受講して

ローマ真由子


2021年2月18日に香川県政策部男女参画・県民活動課主催のNPOマネジメント講座をオンライン受講しました。テーマは「事業の継続性について考える」で,おかやま番町法律事務所弁護士の池田曜生氏が講師でした。

主な内容は,20年ほど前に多く生まれたNPO法人において,現在は役員・代表者の高齢化が進み,一般法人と同様に後継者不足が問題になってきているため,NPO法人の終活についてというものでした。当法人では現在の所,法人の終活については視野に入れておらず,事業の継続をという姿勢ですが,事業を解散,譲渡等の終活をする場合での具体的な手続きは勿論ですが,何が法人の財産になるのか,また継承できるものとできないものなど,事業継続において必要な考え方や方法があると知りました。財産については,どうしてもお金に関するものが頭をよぎりますが,当法人のような活動においては会員という人材や他団体との関係,今までの事業成果なども財産に当たるというのを知り,なるほどと思うところが多くありました。

NPO法人での活動をするにあたり,このような運営に関係する知識もないと事業を継承できないのだな,と強く感じました。私たちはグリーフワークかがわで,日常生活を送る上で誰しも出会う喪失という経験にきちんと向き合えるよう当事者をサポートをしています。そしてその活動は必ず自分自身の為にもなると思います。諸先輩方が認定法人として下さった意味を大切に次世代にも繋いでいかねばと感じた講座でした。



令和2年度精神保健福祉ネットワーク事業
~自殺未遂者支援関係機関ネットワーク会議~


高松市主催の自殺未遂者支援関係機関ネットワーク会議が,2021年2月18日(木)10:00~12:00高松市保健センターで開催され,杉山とローマが出席した。

最初に,高松市健康づくり推進課長より,自殺者数の増加がみられていることから,本会議で関係者がそれぞれの役割を明確にし,さらなるネットワークの構築をお願いしたいとの挨拶があった。引き続き高松市保健センターから,高松市の自殺の現状について自殺者数の推移,年齢改造別の自殺者数,職業別の自殺者数,時間・曜日別の自殺者数,原因・動機,同居人の有無,自殺未遂歴の有無の報告と,保健センターの取組みについて説明があった。

続いて自殺未遂を繰り返している事例について経過と対応についての報告があり,出席者から,保健福祉担当,警察,消防局,NPOそれぞれからの質問と意見交換があった。命を守るための,連携を取ることと個人情報の扱いについて,現在の制度での限界と課題も明確になった。助言者からは精神科医という立場から精神科医療の助言とともに,情報提供だけでなく顔の見える支援体制の構築と,支援者を支える必要性,支援者が相談し合える地域づくりが必要であるとの助言があった。

最後に,この1年の変化について発言が求められ,杉山からは,グリーフワークという視点から,コロナ禍のなかで感染者と非感染者を分断し寛容性を喪失していること,コロナ禍による曖昧な喪失が一人ひとりのグリーフワークの過程に問題を残しているのではないかと危惧していること,支え合える地域づくりに貢献したいことを述べた。ローマからは,一市民として,こうした関係者会議が行われていることを知りえてよかったこと,医療,行政,警察等それぞれの役割の限界を解決していくところに我々NPOの果たせる役割があると思うことを述べた。新しい生活様式に急激に変化して,コロナ禍があったからこそこれまで意識していなかったことに気づいたこともあり,いつか,思い出話としてできるようになるときがくることを望むと締めくくった。

(文責 杉山洋子)





【報告】グリーフワークかがわ第41回・第42回公開セミナー


今年度は「コロナ禍における心の健康に関する特集プログラム」として2回,1月31日と2月21日に,いずれも高松市男女共同参画センターを会場にセミナーを開催した。


第1回 テーマ:コロナ禍における様々な喪失

講師:認定NPO法人マインドファースト理事長 島津昌代さん
   認定NPO法人グリーフワークかがわ理事長 杉山洋子
参加者数:12名
配布資料:「新型コロナウイルスがもたらしたもの」「COVID-19(新型コロナウイルス感染症)と心の健康」(認定NPO法人マインドファースト製)


最初に,島津さんから,コロナウイルス感染が私たちの暮らしにどのような影響をもたらしているのかについて解説があった。私たちは,第1の身体の感染症だけでなく,不安という第2の感染症,差別という第3の感染症にかかっているということに気づかなければならない。その第2の感染症,第3の感染症に振り回されないために必要なことは,ふだんの自分をとりもどし,生活習慣を整えること,確かな情報を知ること,差別的な言動に同調しないこと,ねぎらいや敬意を持つことである。

次に,杉山が資料を使って,第2,第3の感染症の悪循環を解消するためにも,正確さをもって事実を発信することや事実を受け入れていくことが求められることを示した。喪失という観点から,介護の場面,子どもの教育の場面で現実に何が起きているかについて,経験していない者にとっても,想像力を最大限働かせていくことが必要である。

参加者からの次のような感想や意見により議論が行われた。感想としては,COVID-19という災 害の経験はPT growth(注:心的外傷後の成長)になるという考えをとおして,個人としてまた社 会も成長していけるのではないかという希望に繋がる意見があった。また,感染被害者を追いクラ スターを追っていくことにより人間関係が壊れていくのではないかという危惧の念も語られた。

昨年6月から7月にかけて国立成育医療研究センターが行った子ども生育医療センターのアンケートについて,危機のさなかにそうした分断を煽るような調査をすることへの疑問が述べられ,カタストロフィックな経験をしている子どもたちにとって必要なことは,WHOが指摘しているようなケアであり,意識調査を行うことでネガティブな社会イメージを植えつけてしまいかねないこと,こうした大人の鈍感さが,人が人を追いつめ,それまでの一見親しかった関係が壊れて行くことにつながるのではないかとの意見があった。



第2回 テーマ:子どもと喪失 ―絵本を使って―

講師:認定NPO法人グリーフワークかがわ
    認定グリーフカウンセラー 上野美幸・ローマ真由子
参加者数:12名
配布資料:「みんながヒーロー・新がたコロナウイルスなんかにまけないぞ(子ども版)」
    2019年度子どものグリーフワーク週間チラシ


最初に,上野から,子どもの悲嘆反応について具体的な行動を例に挙げて説明し,ローマは,子 どもが大切にしていたコップを割ってしまったときの経験を語り,子どもにとって,なくして初めてそれが自分にとってとても大切なものだったとわかったこと,子どもと話し合える時間を持てたので子どもの気持ちを聴くことができたと述べた。

次に,絵本「みんながヒーロー・新がたコロナウイルスなんかにまけないぞ(子ども版)」を,上 野,ローマで朗読し,質疑を挟んで進められた。

参加者からの感想と意見は次のとおりである。コロナと「たたかう」という言葉について抵抗が ある。子どもたちは漠然とした不安を持っているだろうが,こうした絵本を読むことを通して伝えていけることがあるだろう。おとなの生活が忙しい中でも,たとえ5分でも10分でも子どもの話を聴く時間をつくることが大切である。子どもが安心できる環境を整えるためには,おとなが安心していられることが必要である。子どもたちは瞬間を生きており,子どもが無力感を持っているとき にどうエンパワーするかが重要である。だれかが亡くなった時,自分も死ぬのではないかと思うとか,母親が亡くなったのは自分がいい子でなかったからだと思ったりする。子どもたちをどうエンパワーするか,たとえば,子どもが両親がいるお布団のなかが好きというとき,子どもにとってその場がエンパワーされる場所なのであろう。おとなが自分の喪失と向き合ってこそ子どもの喪失を理解できる。

質疑の中で,当法人のひまわりミーティングの紹介と内容の説明も行った。

(文責 杉山洋子)




◆2021年2月14日 第156回理事会◆


《審議事項》

第1号議案

理事研修による法人運営の見直しに関する事項

役員改選に関し,監事の人選と理事について審議を行い,理事は原則として理事会に出席できる者を選ぶ事と総会前の自薦・他薦の手続きを進める事で了承された。今後の人材の確保,定款の変更について継続審議とする。

第2号議案

事務局の住所に関する事項

来年度総会にて定款での住所表記を「高松市内におく」と変更し,事務局の住所を相談室へ変更することで了承された。

第3号議案

認定カウンセラー認定委員会運営マニュアルの策定に関する事項

総会前の理事会までにたたき台を準備し,総会後にそれを基に来年度更新の際に反映していく事で了承された。

第4号議案

NPO法人取得10周年記念事業に関する事項

次回実行委員会にてシンポジウムのパネラー候補者との面談について確認するとともに,現在の候補者に限定せず検討する事と指定討論者についても審議された。

第5号議案

2020年度グリーフワーク・デー街頭キャンペーンに関する事項

ちらしをAIYAシステムへ印刷発注とすること,発送作業は2月26日18:30から相談室で行う事で了承された。

第6号議案

ゲートキーパー養成研修に係る技術援助に関する事項

香川県精神保健福祉センターから,丸亀市新規採用職員研修の一環として4月2日(金)に開催される標記研修への講師派遣依頼があった。講師として杉山理事長を,アシスタントとしてローマを派遣する事で了承された。



◆2021年2月21日 第99回認定カウンセラー会議◆


  1. 各相談事業の報告
    1月の相談事業について報告があった。
  2. 2月以降の事業計画について
    実務者研修,公開セミナー,グリーフワーク・デー街頭キャンペーンについて説明があった。
  3. 勉強会

    「喪失と悲嘆のためのガイドブック~暮らしの中のグリーフワーク~」

    • 第一章 喪失について
      対象喪失について,個人の歴史を振り返り,今の年齢になって初めて気づくことがあることを,個人的体験とともに解説があった。いつ気づくか,あるいは気づかないままなのか,それはいずれも意味のあることであろう。