2020年(令和2年)2月グリーフワークかがわ
ニュースレター第190号(HTML版)

2020年(令和2年)3月10日 グリーフワークかがわ広報部

グリーフワークかがわ 新書籍


「喪失と悲嘆のためのガイドブック ~暮らしのなかのグリーフワーク~」


グリーフワークかがわ 出版 2020年2月1日


  • 喪失と悲嘆のためのガイドブック ~暮らしのなかのグリーフワーク~

2002年12月,私たちはグリーフワークの解説書「喪失の危機を克服するためのハンドブック-グリーフワークのすすめ-」を発行しました。以来17年,社会状況は大きく変化しました。このたび,グリーフワークやグリーフケアに関する新しい知見や動向も踏まえ,本書を刊行するにいたりました。


人生において,人は支えられる人になったり支える人になったりします。グリーフワークの道を辿るときのガイドブックとして,本書が傍らにあり,人生の旅が豊かなものになることを祈ってやみません。本書の礎でもある「喪失の危機を克服するためのハンドブック-グリーフワークのすすめ-」とあわせてご利用いただけますと幸いです。


挿絵は,ちぎり絵作家の小西桂子さんがグリーフワークとグリーフケアのイメージでご提供くださいました。


本冊子をご希望の方は,こちらをご覧ください。



 リビングwithグリーフ 


パンデミック

花岡 正憲


新型コロナウイルス騒ぎの中で,コーヒショップを訪れコーヒを注文した。マグカップで頼んだところ,「コロナウイルスの関係で,紙コップでしかお出しできないんですが,よろしいですか」と店員の言葉が返ってきた。少し意地悪な質問とは思ったが,「マグカップは,普段からきれいに洗えてないと言うことですか」と返すと,「いや,そんなことはないんですけど,そう言う上からの指示が全国の店へ出ておりまして」と困惑した表情になった。

店頭からトイレットペーパーが消えたり,マスクが買い占められ高値で転売されたり,「ウイルスはデマも一緒に連れてくる」とはよく言ったものだ。

パンデミックはギリシャ語由来で,pan-は「全て」,demicはデモクラシーと同じ語源のdemos,「人々」の意味である。世界的あるいは全国的に,広域に及ぶ流行病をさす言葉である。ウイルスが新型で,正体や対処法がよく分からないために,感染への恐怖が広がりやすいのだろうが,今回は感染の実態を超えて恐怖心理の方がパンデミックになっている。panic(恐怖,恐慌)とpandemicが語源的に共通しているのは興味深い。

2009年にも, 新型のH1N1亜型インフルエンザウイルスが世界的に流行した。この時のことを知人や保健医療関係者に尋ねたところ,まったく覚えてないとか,そう言えばよく手洗いをしたことを思い出したという返事が返ってきた。約10年前のこととは言え,当時の記憶が薄れているのは,今回ほどの混乱がなかったからであろう。

今回は,国内外から危機管理における政府のガバナンスが問われる事態になっている。未知の感染症への対応に欠かせないのは,正確な情報の公開と,法的根拠と知り得た科学的根拠に基づく適切な介入である。断片的な情報の発信や政治的思惑からの曖昧な発言は,人々に不信感や不安を抱かせてしまう。

例えば「不要不急の集まりは控えるように」と言った抽象的な表現である。不要不急の基準があるわけではなく,「どれぐらい人が集まるところ?」「小規模の人の集まりは?」「友だちとお茶をするのもまずいの?」「職場も危ないの? 込みあった通勤電車は?」「飛行機に乗っての出張は?」など,結局,行為者の判断に委ねることになり,混乱が増大するだけだ。

2009年の新型インフルエンザへの対応が混乱したことを踏まえ,後に対策の総括を行い,将来に生かすために2012年に制定されたのが,「新型インフルエンザ等対策特別措置法」である。

この法律は,新型インフルエンザだけでなく,急激に流行して国民に重大な影響を及ぼすおそれのある新たな感染症が発生した場合にも対応できることになっている。しかし,今回,この法律が迅速かつ柔軟に運用された形跡はなく,法律の存在自体が忘れられていたかのような印象さえある。

2月27日の首相の休校要請発言は唐突だった。全国の小中高校と特別支援学校の一斉休校要請は,現場に混乱が広がった。私たちの社会は有機的で複雑なつながりの中で成り立っている。社会の構成要素の一部とは言え,いきなりすべての学校機能を停止すると,他の部分への影響が出ることは必至である。

自治体との事前協議もなければ,なぜ一斉休校なのかその根拠についての詳しい説明もなかった。翌日には,所轄大臣から,幼稚園や保育現場は当てはまらないとか,それぞれの自治体の判断に任せるという見解が示されている。

こうした茶番とも言える場面を見せつけられ,国民の間に戸惑いや疑問が起きるのは当然だろう。新型ウイルスの感染への対応はその程度のものなのかと,根拠のない楽観論が広がったり,感染予防に真剣に向き合おうとする人々の思いが白けてしまうことがあったりしたら,これはこれで,「根拠をもって正しく恐れる」という点からも問題があろう。

毎日流されるコロナウイルス関連番組を見ていると,生物化学兵器の攻撃を受けた町を舞台にしたSF映画を観ているような錯覚に陥る。政府の対応が,後手に回る中で,仮想空間が広がり,実態の方を仮想世界に合わせているかの感すらある。

ことの始まりは,クルーズ船ダイアモンド・プリンセス号の検疫からだった。生活者の日常性とは程遠い防疫と政治的思惑でことが進んで行くなかで,人道的配慮や感染予防や医療などが,置き去りにされてしまった。

いま大切なことは,人々が平常心を取り戻すことだ。日本にもCDC(米国疾病管理予防センター)をつくる必要があると言う論評とか,エビデンスに基づかない専門家のコメントでもなければ,「私の責任において」という言わずもがなの言説に象徴される政治家のスタンドプレーでもない。政府が,国民が納得して受けいれられる明示性が高い指針を示すことだろう。

コロナウイルスに対しては,今のところ特別な治療法やワクチンはない。こうした中でも,経験知として有効なものがある。感染経路は,飛沫感染と接触感染である。コロナウイルスには,通常のインフルエンザウイルスと同様の感染予防法が有効だとされている。人が密集し換気がよくない場所を避けること,そして手洗いであろう。

季節性インフルエンザの対応で流行が終息に向かうことを願いたい。


(グリーフカウンセラー 精神科医)
2020・2・29




◆2020年2月9日 第142回理事会◆


《審議事項》

第1号議案

2020年度通常総会に関する事項

第16回社員総会を2020年6月14日(日)13:30開始とすることで了承された。社員総会の議案として,事業報告,収支決算報告,監査報告,2020年度事業計画案,収支予算案に加えて,会員の活動参加の推進についても議論を行うことで了承された。

第2号議案

新書籍発行に関する事項

新書籍が完成し,1月31日に相談室に搬入されている。執筆,事務担当者らへの報償費について決定し,著者とちぎり絵作家の支払いは執筆者として源泉を行った額を支払うことで了承された。頒布は1冊500円とする。

第3号議案

退会希望者への対応に関する事項

入会直後に退会の申し出があったことへの対応ついて検討し,2019年度の正会員数としてはカウントし,定款第10条に従い,退会届を理事長宛に提出するように連絡することで了承された。

第4号議案

情報管理に関する事項

1月31日に事務局電話への高松北警察署から寄せられた問い合わせへの対応について,理事長から報告があり,外部機関から紹介があった場合の対応について審議を行った。協力依頼については,文書にて要請してもらう必要があることを確認して了承された。

第5号議案

技術援助事業「社会福祉法人香川県社会福祉協議会主催傾聴ボランティア養成講座」に関する事項

香川県社会福祉協議会から2020年度傾聴ボランティア養成講座の企画案について連絡があり,担当者と事前に打合せを行いたいとの要請があったため,技術援助担当理事が香川県社会福祉協議会の担当者と協議することで了承された。

第6号議案

2020年度香川県地域自殺対策強化交付金に関する事項

資料:令和2年度地域自殺対策強化事象計画書

香川県地域自殺対策強化事業補助金について,第7号議案に関連し,香川県障害福祉課担当者と理事長との協議の結果が報告され,これまでの事業に普及啓発事業を加えて申請することが提案された。2020年度についてはすでに予算を提出済みであることから,総事業費は変更できないが,相談事業の旅費,交通費を見直し,普及啓発事業の駐車場代に変更して提出することで了承された。2021年度事業の申請の際には,普及啓発事業の内容も検討し,総事業費も見直しを行うことで了承された。

第7号議案

香川県令和元年度自殺対策強化月間(3月)自殺予防啓発キャンペーンに関する事項

配布資料:令和元年度自殺対策強化月間(3月)自殺予防キャンペーンについて

香川県障害福祉課が行う,自殺予防キャンペーンへの協力依頼について,第141回理事会後の障害福祉課との協議内容について理事長から報告があった。開催は,2020年3月2日JR高松駅コンコース17:30~19:00予定となっている。

第8号議案

会員の活動参加促進について

第1号議案にも関連し,認定カウンセラー及び正会員のグリーフワークかがわへの各種活動への参加促進について,本年度アンケート調査を実施,次の年度の総会で結果を報告するなど事業計画へ盛り込む予定とすることで了承され,次回理事会に理事長がアンケート案を提出することで了承された。

第9号議案

GWK認定カウンセラー資格更新申請に関する事項

2020年1月15日~2月15日の申請期間を設けて実施しているGWK認定カウンセラー資格更新申請について,任意の様式で遅延の理由について記載した申請者については,2月27日(必着)までの申し込みを受け付ける予定とすることで了承された。




◆2020年2月16日 第88回認定カウンセラー会議◆


  1. 各相談事業の報告
     1月の相談事業について現状報告があった。
  2.  新書籍発行,香川県自殺予防街頭キャンペーン,2019年度グリーフワーク・デー街頭キャンペーン,認定カウンセラー実務者研修について周知があった。
  3. 3月の認定カウンセラー会議について
     3月15日に開催するカウンセラー会議については,2019年度に新たに認定されたカウンセラーには郵送で案内し,会議内容は,通常の会議内容とすることとなった。
  4. 勉強会について
     今回は時間がなく次回に延期となった。
    (「ともに悲嘆を生きる グリーフケアの歴史と文化」島薗進 著 朝日新聞出版 2019 講読)