2019年(令和元年)5月グリーフワークかがわ
ニュースレター第181号(HTML版)

2019年(令和元年)6月13日 グリーフワークかがわ広報部

~グリーフワークへの思い~


僧侶である私はこれまで多くの方の葬儀に接してきました。また両親も既に見送っています。ただ私自身は死別による大きな喪失は経験していません。しかし以前、自死されたお子さんの葬儀がありました。それまでも少なからず仏教について学び、傾聴に関する研修なども受けてはいましたが、私は悲嘆にくれるご遺族に十分寄り添うことが出来ませんでした。想い出すと今でも忸怩たる思いですが、この時自らの存在意義を問わずにはいられませんでした。

その後、積極的にグリーフケアに関する講座を受講しました。そうした中、グリーフワークかがわの公開セミナーやカウンセラー養成講座にも参加し、縁あって今年度より認定カウンセラーの末席に加えて頂いた訳ですが、私自身まだまだ心許なく、これからも勉強を続ける必要があると痛感しています。なぜなら私にとってのグリーフワークとは、僧侶である私のライフワークでもあるからです。

三年程前、京都大学こころの未来研究センター教授のカール・ベッカー氏から、一部のイギリスやアメリカのホスピスでは、終末期の患者とその家族や友人、医療関係者を招いてのパーティーが開かれているという話を聞きました。このパーティは患者が亡くなる前後で7回程開かれるのだそうですが、これを行うのと行わないのとでは、遺族等のその後に大きな違いがあるそうです。つまりグリーフケアに効果があると考えられていて、そのヒントは日本仏教の七日参りや初盆、月参りだということでした。

近年日本では宗教離れが指摘され、葬儀や法要の簡素化が進んでいます。その要因は様々ですが、寺院や僧侶のあり方もその一つです。しかし仏教そのものが陳腐化したのではありません。むしろ超高齢化社会を迎える今後、その必要性は増していると考えます。

以前、上智大学グリーフケア研究所所長の高木慶子先生は「神様でも仏様でもご先祖様でもおてんとうさまでも、名前は何でも良いのです。大いなる存在に頭を垂れ、手を合わせる心がスピリチュアリティです」と話して下さいました。以来、私は「おかげさま」と感謝出来る心を育むことが、幸福感やグリーフケアにも繋がると考え、これからもその為に働いていきたいと思っています。

グリーフカウンセラー 山本匡史



◆リビングwithグリーフ◆


食品ロスの死角

花岡 正憲


「お父様,お母様ありがとうございます。お百姓様ありがとうございます。天皇陛下様ありがとうございます。いただきます」。幼稚園で弁当持参の日は,手を合わせて唱える食前の作法があった。戦後,地方には色濃く残っていた皇国思想も,天皇の人間宣言で,やがて「天皇陛下様」の部分は,唱えられなくなったと記憶している。

「お百姓様」の方は,食料生産者への感謝の気持ちに他ならない。ご飯粒は一つ残さず,魚は骨の周りの身もこそげて食べることを厳しく教えられた。貧しい食料事情の中にあって,夏は,飯櫃の米飯は臭くなり,台所の蠅帳に入れておいた煮魚は,どこからか入りこんだハエの格好の産卵場所になった。それでも,食べられらくなった米飯や魚は,煮汁をかけて与えると喜んで食べてくれるネコやイヌがいた。

林間学校で,スイカ割がはじまった。食べ物が空腹を満たすためのものだけでなく,アトラクションに使われるようになった。食料事情が好転しつつあることを実感したが,竹の棒でスイカに命中させる者が,最後までいないことを祈った。割られたスイカは,砂まみれになって食べるところが少なくなるからだ。はじめてそうめん流しを経験したときは,誰の箸にも引っかからず溜桶に流れ落ちたそうめんの行方が気になった。

食品ロス削減推進法が,2019年5月24日成立した。努力義務ではあるが,国や自治体でもようやくこの問題への取り組みが始まる。恵方巻の売れ残りが大量に廃棄されるなど社会問題化して,一部のコンビニ大手では,消費期限の近づいた弁当やおにぎりをポイント還元の形で値引きする方針を打ち出した。スーパーマーケットでは,値引きシールが貼られるまで時間待ちをする消費者もいる時代である。

最近,そのスーパーマーケットの鮮魚コーナーを訪れると,イワシやサンマ,ギザミやアジなどが,頭から肩口のあたりまで切り落とされて並んでいた。頭付きはないのかと尋ねると,「皆さん頭は嫌がりますから」と,目の前の客も皆さんの一人にしようとする。魚の鮮度の目安になる目や内臓を始末してしまったのでは,もはや鮮魚でない,と苦情も言いたくなったが,「切り落とされた頭の部分はどこへ行くのか」と尋ねると,「生ごみです」とにべも無い。

今日,ホテルやレストランでのバイキングは,見慣れた光景になった。グループでやってきた人の中には,それぞれ,人の分まで取ってテーブルへ持って行き,大量に食べ残しが出ていることがある。「食べ放題なのに食べ物がなくなっていた。債務不履行で金返せ」という書き込みがネット上に流れる。しかし,食べ残したときは,店の方が客にペナルティーを科したくなることもあるだろう。バイキングテーブルの前で,ごく少量を試食して,取るか取らないかだけでなく,取る分量も決める。そんな欧米人の姿を見かけると,バイキングという食文化は,個人主義と合理主義の上に成り立っているのかもしれないと思ったりする。

日本のカロリーベース食料自給率(1人1日当たり国産供給熱量÷1人1日当たり供給熱量)は,1965年は73%であったが,2011年は39%である。日本では,食べられる食料品の27%,年間643万トンが廃棄される。フードマイレージも,日本は極端に長く世界一である。そのため,環境負荷も大きく,生産地に経済的圧迫を与え,フェアトレードを損なう大きな要因にもなっている。

生産地と消費地の距離が遠くなっても,スーパーマーケット,コンビニ,ファーストフード店へ行けば,食べ物はいつでも手に入る。食料危機や飢饉と言う事態は,なかなかイメージしにくい。食品ロスを考える上で,一人ひとりが「お百姓様」を体験してみても良いだろう。自家菜園で採れた野菜は,なかなか食べ残せない。


(グリーフカウンセラー 精神科医)
2019・5・30




◆2019年5月12日 第133回理事会◆


《審議事項》

第1号議案

2018年度事業報告と収支決算に関する事項

村上美智子理事から4月23日,福岡司法書士が事業報告書を,生駒税理士が総勘定元帳等財務諸表の点検を,それぞれ行なったとの監査結果報告があり了承された。合わせて,事務局長費と会計担当者並びに事務局担当者への報償費の一部については,当初の執行計画どおりの支払い行為が行われなかったため,予算の組み替えを行ない執行したため,これについては,収支決算書の別紙として保存するとの説明があり了承された。

第2号議案

2019年度事業計画案に関する事項

第131回理事会で審議された事業計画案について,2018年度のテーマ募金活動の実績を踏まえ,あらためて事業計画案について審議した結果,2020年2月頃に子どもと喪失をテーマとしたNPO認証取得10周年記念シンポジウムを行うこと,公開セミナーは,参加者の関心が高い在宅と看取りをテーマとした2回シリーズとして行うことで了承された。

第3号議案

2019年度収支予算案に関する事項

2019年度は,養成講座及び技術援助等の講師を育成するための人材育成事業を新規事業として組み入れること,2018年度事務局長の報償費として計上された120,000円は,理事長に対する役員報酬として計上すること,会計担当に従事する者については,時給1,500円,概ね月8時間で計上し人材確保に努めることで了承された。また,経理事務コンサルテーション料として計上されている33,000円については,顧問としての委嘱を行なっておくことと,今後会計担当に従事する者は,顧問の有効活用を行うことで了承された。

第4号議案

2019年度会計担当者に関する事項

議案3で承認された条件で,理事長がリクルートを行ない,契約書を締結して実施することで了承された。




◆2019年5月19日 第79回認定カウンセラー会議◆


  1. 各相談事業の報告
     4月の相談事業について報告され,相談に繋がる経路についての現状報告があった。
  2. 2019年度グリーフカウンセラー養成講座・基礎コースについて
     第1回企画会議の報告がありアシスタント講師の募集の案内があった。
  3. 対面型(グループ,個別),電話(予約専用,即時直通型)それぞれの相談事業の実務者研修の方法と広報の方法について話し合われた。