2019(平成31)年4月グリーフワークかがわ
ニュースレター第180号(HTML版)

2019年(令和元年)5月15日 グリーフワークかがわ広報部

~グリーフワークとの出遇い~


この度、新しく認定グリーフカウンセラーに仲間入りさせていただいた中原大道と申します。私は讃岐弁でいうところの“おじゅっさん”。標準語で言いますとお坊さんです。

さて、お坊さんの主な仕事というとお経を読むこと、そして説法、仏教の教えを説くことです。ある時、私の説法の先生の口から驚きの言葉が発せられました。「本当に悲しみに暮れている人に説法なんていらない…。」

衝撃でした。悲しみの底にいる人に説法で慰めたり、力を与えるのが私たちの仕事じゃないのか?しかもそれが説法の先生の口から発せられたことに驚きました。実はその先生自身も若くして奥様を亡くされるという大きな喪失体験を持っているのです。ご自身の体験からの言葉でした。これが【ただ聞く】というキーワードに出会った瞬間でした。

その後、ご縁あってGWKの公開セミナーに参加させていただい中でもう一つの大きなキーワードに出会いました。それがグリーフとは【あらゆる喪失体験】であるということ。この二つのキーワードで、私たちの身の回りにはどれほどのグリーフカウンセリングの機会があふれていることだろうということに気づかされました。お年寄りが毎度毎度同じように「膝が痛い」と訴えるのも、健康な体の喪失というグリーフです。医療の専門家でもない私に求められているのは、ただ痛いということを聞いてもらいたいということ。たとえ医療の専門家だったとしても、訴えたいのは「痛くて辛いんだ」ということでしょう。これは私も実体験したことです。

数年前、座骨神経痛の痛みに苦しんだことがありました。いくつかの病院を転々としましたが、どの先生も「何で痛いの?」「運動不足じゃない?」「とりあえず薬出しておきますから」とつれない応対ばかり。ついには激痛で立てなくなって救急搬送されましたが、先生方は同じような対応。唯一救われたのは苦痛にゆがむ私の顔を見て看護師さんが一言放った「痛そう…。」というつぶやきでした。その瞬間少しだけ、これまでなかったホッとした感覚を覚えました。

私たちの身近なところにも、喪失体験は溢れています。アドバイスを求めているのではなく、ただただ苦しみや、辛い気持ちを訴えたいだけの方がたくさんいらっしゃいます。身近な小さなグリーフケアにも目を向けつつ、お手伝いできる範囲でGWKの活動にも微力ながら協力させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

グリーフカウンセラー 中原大道



2018年度テーマ募金へのご協力ありがとうございました。


最終募金総額は361,000円になりました。


香川県共同募金会の平成30年度テーマ募金に参加し,「大切な人をなくした子どもの悲しみを支援するためのプロジェクト」をテーマとして掲げて,目標額は50万円とし,2019年1月1日から3月31日まで募金活動を行いました。その結果,法人募金を含め,50件の寄付があり,最終募金総額は361,000円に達しました。

私たちの掲げたテーマにご賛同いただき,ご支援をいただきましたことを感謝申し上げます。

近年,喪失を経験したときの悲しみを支える活動は広がってきました。しかし,悲しみを抱えた子どもたちへの理解は,まだ十分とは言えません。

このたびいただきましたご寄付は,子どもたちの悲しみを理解し,受け止め,支える地域づくりのために,相談活動,啓発活動に使わせていただきます。

子どもたち一人ひとりが,伸びやかに可能性を伸ばしていける環境づくりに貢献できるよう,活動を続けていく所存です。

2019年度も,同様のご金活動を行う予定です。引き続きご支援をよろしくお願いします。

2019年4月

認定NPO法人グリーフワークかがわ

理事長 杉山洋子



◆リビングwithグリーフ◆


クライエントのこだわりを生かす

花岡 正憲


人は,それぞれ,こだわりというものがある。こだわりは,自分らしくありたいと思える大切な価値でもある。

以前から欲しいものがあって,ここならあるかも知れなと思って店に入る。店員は,こちらの話を一通り聞いた後,「これはどうか」と店に置いてあるものをすすめてくる。

客が難色を示すと,客のこだわりをさらに詳しく聞くとか,どのような商品展開をしているかを調べるでもなく,「人気の商品で品薄になっている」「テレビでも宣伝している」とたたみかけてくる。

店側にすれば,置いてあるものを売りたがるのは分からなくはないが,客としては個性的であることを無視され,集団同調主義を押しつけられた気分にもなる。「ありがとうございました。またよろしくお願いいたします」と言う店員の言葉を背に,「また」はないかも知れないなと思いながら店を後にする。

カウンセリングに訪れるクライエントにも,こだわりがあるから,カウンセラーを探すときは慎重になる。あらかじめ情報を取り,ここなら自分が望んでいる方向で力を貸してくれるかも知れないと思って訪れる。

例えば,「学校へ行かない子どもを学校へ行かせるにはどうすればよいか」という親の相談である。こうしたとき,カウンセラーは,クライエントの事情を聞きながら,どこかのタイミングで手持ちの商品を売ることを考えていることがある。「自分で動き出すまで待ちなさい」「子どもと距離をとりなさい」「学校がすべてではない」など,言葉のショーウィンドウにチラチラと目を移しながら,続けて話を聞いて行く。

クライエントの話が一段落してところで,カウンセラーは,言葉のショーウィンドウから商品を取り出して,クライエントにすすめてみる。しかし,クライエントは,その商品は,これまで訪れた別の店でもすすめられるままに買ってはみたが,使い勝手が悪かった。また,同じものをすすめてくるのかと思う。ここには,自分が探している商品は置いてなさそうだと,がっかりしてカウンセラーとの話を終える。

「また何かあればご連絡ください」クライエントが部屋から出て行くときのカウンセラーの常套句でもある。クライエントは,自分が求めているものが置いてなかったのに,「また」はないだろう,「ご期待にそえず申し訳ありません」だろうとも言いたくなる。

精神科医療の現場でも似たような事情がある。「今の仕事を続ける自信がなくなった。でも辞めたくない」そんなクライエントの話を聞きながら,医師は,このクライエントの処方を考えはじめることがある。

クライエントのこだわりは,クライエントが失いたくないものでもある。それを守るために,これまでどのような試みをしてきたかを聞く中で,そこにクライエントの力を感じとることが大切だ。

クライエントのこだわりの修正や変更を図ることを急ぐことなく,クライエントのニードに添って支援をしてみる。その方が,クライエントの協力も得られやすく,クライエントの強さを育むことができる。

クライエントのこだわりを生かし,カウンセラーが協力して,クライエントが求めるものを受け入れやすいものにつくりあげていく。クライエントがエンパワーされていく上で,こうしたクライエントとカウンセラーの協同作業が欠かせない。


(グリーフカウンセラー 精神科医)
2019・4・30




◆2019年4月14日 第132回理事会◆


《審議事項》

第1号議案

2018年度事業実績と収支決算に関する事項

事業実績について理事長より示され,収支決算については,村上美智子理事より,現在作業中の収支決算の報告が行われた。今後も税理士に助言を得ながら4月23日の監査及び6月9日開催予定の第15回通常総会(2019年度総会)に向けて準備を進めることで了承された。

第2号議案

2018年度香川県共同募金会テーマ募金の事業報告について

2018年度事業のための2017年度テーマ募金は380,940円であり,助成事業完了報告案が示された。最終的な確認を行って4月26日の締め切り日までに香川県共同募金会に報告書を提出することで了承された。

第3号議案

2019年度収支予算案に関する事項

2018年度事業実績を踏まえ,予算案を作成し5月の理事会にて提案予定となっている。
NPO法人取得10周年記念シンポジウムと講師育成の予算を追加すること,2018年度テーマ募金(2019年度事業)の結果が361,000円であることを踏まえ,啓発事業として公開セミナーの開催については縮小することで了承された。

第4号議案

2019年度香川県共同募金会テーマ募金に関する事項

2018年度に引き続き,同様のテーマで2019年度香川県共同募金会テーマ募金を申請予定とすることで了承された。

第5号議案

2019年度認定カウンセラー認定委員の選出について

本年度認定委員として2018年度の認定委員7名が選出された。

第6号議案

認定カウンセラー資格更新手続要項に関する事項

グリーフカウンセラー,ヘルプラインカウンセラーの資格更新手続き要項の未定箇所については,第5号議案にて選出された認定委員にて本年度審議を行う予定とすることで了承された。

第7号議案

2019年度グリーフカウンセラー養成講座に関する事項

9月26日,10月3日,10日,17日,24日,31日の日程で開催予定とすることで了承された。会場はサンポート高松第51会議室で上記日程の18時から22時の枠を仮予約済である。第1回企画会議を5月16日18:30に行うことで了承された。




◆2019年4月21日 第78回認定カウンセラー会議◆


  1. 各相談事業の報告
     3月の報告と,2018年度の相談数について報告があり,自殺予防土曜ホットラインの電話相談件数が増えていることが報告された。
  2. 2019年度グリーフカウンセラー養成講座・基礎コースについて
     9月26日から毎週木曜日18:30からサンポートホール高松で開催すること,第1回企画会議を5月26日に開催することと,講師会を重ねていくことの説明があった。
  3. 2019年度実務者研修について
     4月25日,28日に事前研修を行うことと,年間を通して実務者研修を行っていく。
  4. その他,内部での連絡事項を行った。
  5. 勉強会
     今回は実施せず,5月で「子どもの哀しみによりそう・喪失体験の適切なサポート法」の輪読は終了する予定である。