2018(平成30)年6月グリーフワークかがわ
ニュースレター第170号(HTML版)

2018(平成30)年7月12日 グリーフワークかがわ広報部

◆グリーフワークへの思い◆


今から六年前の八月の朝に、突然、私の最愛の夫は亡くなりました。

平凡でも幸せな家族の日常が、ある日突然失われました。自分の心の半分がもぎ取られて、空っぽになったような感覚。悲しみや怒りやあらゆる負の感情に押しつぶされそうになりながら、心を麻痺させて、笑顔で日常を過ごしていました。

心が悲鳴をあげそうな時に、伴侶を亡くした会のグループミーティングを知りました。

毎月一回八人ほどのグループで全七回行われるグループミーティングには、残念ながら一回しか参加できませんでしたが、そこで知り合った人と親しくなることができました。彼女は私とほぼ同じような状況で夫を亡くしていて、お互いに夫のことを語り合うことで、傷ついた心も癒されていきました。

心の底から笑えるようになるまでに二年かかりました。普通に接してくれる友人、同じ痛みを分かち合える友人、見守ってくれる家族。たくさんの人に支えられて、今の自分がいます。でも、自分の心を立て直す一番の力になったのは、やはり同じ境遇の友人と語り合って共感することでした。

私が日常を取り戻してから、どこかにいる伴侶を亡くした人に思いを馳せることが増えました。私には、幸いにも共感しあえる友人ができましたが、身近で語り合ったり相談し合ったりできなくて、深い悲しみの人がいるのではないかと。伴侶を亡くしたあの絶望感、喪失感。それは経験したからこそ理解し合えるものがあるし、自分と似たような人の力になることはできないかと思っていました。

そんな時に、グリーフカウンセラー養成講座基礎コースを受講させていただくことができました。

カウンセラーには高度な技術が必要だと思いましたが、講座の中で、自分のグリーフワークの過程を振り返り、心を見つめなおす事ができました。

死別は、その悲しみの深さも表現方法も人それぞれだと思います。私は知識も技術もありませんが、死別の悲嘆の中にいる人の心にそっと寄り添えられる人でありたいし、そういう活動ができればと思っています。


グリーフカウンセラー  細川 文子



◆グリーフワークかがわ第14回社員総会が開催されました◆


特定非営利活動法人グリーフワークかがわ定款第23条に基づき第14回社員総会を開催しましたので,下記の通り報告いたします。


日 時:2018年6月10日(日)13時30分~14時40分
場 所:丸亀町レッツカルチャールーム

(高松市丸亀町1番地1高松丸亀町壱番街東館4階)

出 席:出席者15名 委任状出席23名(会員総数55名)


  1. 開会の辞

  2. 議長選出
     上野美幸理事から,正会員総数55名中,出席者15名,委任状提出者23名の報告があり,正会員総数の2分の1以上の出席者があるため定款第26条による定足数を満たすことが確認され,第14回社員総会は有効に成立する旨が宣言された。議長は,立候補により瀬尾憲正が選出された。議長は,書記を花岡正憲,議事録署名人を村上美智子とローマ真由子に指名した。

  3. 議 事
    • 第1号議案 2017年度事業報告

      杉山理事長より報告が行われ,以下の3点の修正が行われた後賛成多数で承認された。

      修正事項:
      ①2017年度事業報告書 2 事業の実施に関する事項の講師派遣 高齢者生き生き案内所人材バンク登録者交流会「きらりんぐ」全体会の支出金額欄の「0」を「10,000」に修正。
      ②同技術援助事業の「12月 講師派遣:香川県社会福祉協議会「傾聴ボランティア養成講座」高松市 受講者 10,000」の欄は削除。
      ③2017年度事業報告書 3 事業詳細に,2018年1月1日から3月31日まで実施したテーマ募金について,テーマ「大切な人をなくした子どもの悲しみを支援するためのプロジェクト」と,寄附金総額「380,940円」を追記する。



    • 第2号議案 2017年度収支決算報告

      村上(美)理事より,総会資料に沿って,2017年度の収支決算について報告が行われた。質疑を求めたところ,質疑はなく,賛成多数により承認された。



    • 第3号議案 監査報告

      生駒学監事より,2017年度事業について適正かつ正確に執行されていると認め監査を終了したと報告があった。



    • 第4号議案 2018年度事業計画案

      杉山理事長より,総会資料に沿って,2018年度の事業計画の説明が行われた。



    • 第5号議案 2018年度収支予算案

      村上美智子理事より,総会資料に沿って,2018年度収支予算案の説明が行なわれた。
      瀬尾議長が,第4号並びに第5号議案について,一括質疑を求めたところ,以下の1点の修正が行われた後賛成多数で承認された。

      修正事項:
      第4号議案 2018年度事業計画(案) 2 特定非営利活動に係る事業の実施に関する事項 管理運営
      ⑤募金活動の実施予定「通年」を「通年(2019年1月1日~3月31日の共同募金会助成事業テーマ募金活動を含む)」に修正。



    • 第6号議案 定款変更

      杉山理事長より,定款第37条2について,決裁作業の効率化を図るためとして,変更の趣旨が説明された。質疑を求めたところ,質疑はなく,原案が賛成多数で承認された。



    • 第7号議案 その他

      なし



第14回社員総会を終えて


ある老舗の歴史に触れる機会があった。江戸時代から続く見本帳に基づいて作られている菓子のひとつに「更衣」という名のお菓子がある。5月の末から3日間だけ販売される特別なものだという。切り口にうっすらと掃いた和三盆糖が涼やかで絽の衣を思わせるところからその名がつけられたそうである。近年,原材料の生産が激減する中にあって,収穫量だけでなく,製糖工程は,気温や湿度などの影響も受けやすい。時代とともに製糖機材や工場設備も変化して行く。世の中の甘さに対する好みも変わる。3日間のために,一つずつお菓子を作る務めを果たす。250年にわたり銘菓としての伝統を受け継いできた先人たちの並々ならない努力に思いを馳せる。

6月10日に第14回社員総会を終えた。前年度の事業を振り返り,今年度の活動の方向が決まった。事業を具体的に進めていく中で,変えていくべきことと変えてはいけないことがある。判断に迷うとき,事業を立ち上げるに至った原点に立ち戻ると,選択すべき道が見えてくる。年数を重ねていけばいくほど,「初心を忘れず」を心に刻み,事業の一回一回の準備を,丁寧に整えていきたいと思う。

玄関に打ち水をするのは,主が,すべての準備が整いましたという茶道の習わしからきている。きょうも,玄関先を掃き清め,打ち水をしておけるように,努力を重ねていきたい。


2018年6月30日

特定非営利活動法人グリーフワークかがわ理事長 杉山洋子


◆リビングwithグリーフ◆


子どもの虐待防止~何が問われているのか~

花岡 正憲


東京都目黒区で3月,当時5歳の女の子が両親から虐待を受けて死亡した。死亡する10日ほど前まで書かされた反省文には,「・・・もうおねがい ゆるして ゆるしてください おねがいします」と記されていた。

こうした事件が起きるたびに,議論になるのが児童相談所のあり方である。今回も,児童相談所の職員の負担を軽減するために,専門職員を増やし法律家を配置して権限の行使をしやすくする意見や警察と全件の情報共有を強調する声が上がっている。

児童相談所は,児童虐待防止法に基づき,強制調査権をもって児童虐待防止に取り組める行政機関である。ここに法律家を配置するというのも腰が引けた姿勢だ。警察の援助が必要なこともあろうが,個別のケースについて警察に何を期待するのか明確にしないまま,全件の情報共有では,他機関への丸投げのそしりを免れない。

毎度のこととは言え,児童虐待問題に関わる人たちの人員増や権限強化だけを訴える姿勢からは,虐待問題が終息に向かう方向は見えてこない。NPOなど市民グループは,早期の相談支援を重視するが,相談支援を拒む場合には介入が難しいことも事実だ。

子どもの虐待は,身体的,精神的,社会的,経済的要因が複雑に絡み合って起こると考えられている。起きてからの対応では,失われるものが少なくない。発生要因の解消に努め,可能な限り未然防止に取り組むべきであろう。

虐待の危険因子については一定のエビデンスのある知見も蓄積されている。例えば,保護者側のリスク要因としては,望まぬ妊娠,10代の妊娠,被虐待経験,育児に対する不安やストレス,また養育環境のリスク要因としては,夫婦関係をはじめ人間関係に問題を抱える家族,転居を繰り返す家族,親族や地域社会から孤立した家族,失業や転職の繰り返しで経済不安のある家族,夫婦不和,配偶者からの暴力等不安定な状況にある家族などがあげられる。

さらに,最近の若者が置かれた社会的状況に関する実証的な研究では,以下のようなことが明らかになっている。両親の不和や離婚,家族内暴力など,家庭内に問題を抱えた若者は,早い離家が起こりやすい。仕事にステータスを見いだせず,経済的に貧しい階層に所属することになる。失業率の高さと10代の妊娠率の高さには強い相関関係があり,失業中の若者は,正規雇用の者や就学中の者よりも子どもをつくる可能性が高い。就業や教育など,充足感を与えてくれる資源へのアクセスを拒まれた若者たちは,家庭を持ち,子どもをつくるというアイデンティティをよりどころにすると言う。

子どもは親を選んで生まれてくる自由がない。それだけに,養育能力が乏しい親のもとに生まれ,育てられることを拒む自由を保障するという視点も重要であろう。一方,婚姻の自由は憲法で保障されており,養育能力のない若者に対して,子どもを産み育てる権利を無前提に制限するのは優勢思想につながりかねず慎重であるべきことは言うまでもない。

人は生まれながらに自由(born free)であり,その尊厳を何ものによっても損なわれることがあってはならない。この世に生を受け,一人の人格として尊重される自由の保障は,将来親となる人だけでなく,政治の責任と社会全体の協力で実現すべきであろう。ハイリスクとされる若者や家族が明らかになっていながら,単なる類型化で終らせるのでは偏見や差別につながりかねない。実証的データをこうしたことに生かすのが,人類の英知というものであろう。若者たちの仲間づくりや就学・就労支援などが生活リスク下げ,児童虐待の未然防止につながることは言うまでもない。


(グリーフカウンセラー 精神科医)
2018・6・26



◆2018年6月10日 第120回理事会◆


《審議事項》

第1号議案

2018年度グリーフカウンセラー養成講座・基礎コースに関する事項

2018年度の企画について,9月以降に全6回を開催予定とする。理事会より主担当を上野として,第1回企画会議を6月28日(木)19:00,高松市男女共同参画センター学習室にて行う予定とした。今後主担当より認定カウンセラーに講師およびアシスタント講師希望者への呼びかけを行う。会場については男女共同参画センターでの開催予定とし,ローマ理事が仮予約を行う予定とすることで承認された。

第2号議案

公益社団法人かがわ被害者支援センターへの技術援助に関する事項

公益社団法人かがわ被害者支援センターから,本年度の相談員継続研修の講師派遣依頼があり,講師を杉山理事長として受諾することで了承された。

第3号議案

四国公衆衛生学会への演題応募に関する事項

2019年2月8日開催予定の四国公衆衛生学会について,本年度は香川県での開催となり,グリーフワークかがわとしても,昨年度のモデル事業である,「喪失を経験した親・保護者のためのグループミーティング」について演題を応募する方針で了承された。

第4号議案

三豊市自殺対策計画策定委員会委員選出依頼に関する事項

三豊市福祉課より当法人に標記委員会の委員としての参画依頼があった。策定委員会運営要領などについて文書での説明および依頼をもって受諾の可否について今後改めて審議する。



◆2018年6月17日 第68回 認定カウンセラー会議◆


  • カウンセリングの現場での状況報告と課題について
     5月の相談事業について報告があった。
  • 2018年度グリーフカウンセラー養成講座について
     9月27日から7週にわたって毎週木曜日実施予定とし,会場を予約していること,第一回企画会議については6月28日に実施することが報告された。


【勉強会】


担当:吉田亜紀子

使用文献:
「子どもの悲しみによりそう・喪失体験の適切なサポート法」
ジョン・ジェームス、ラッセル・フリードマン、レスリ―・ランドン著
水澤都加佐、黒岩久美子訳
2014年大月書店

解説の概要:

神話シリーズ,「一人で悲しみに浸れ」,「強くあれ」,「忙しくせよ」,「時間がすべてを癒す」について読み進め,主に二つの事例を軸に,ディスカッションを行った。

一つ目は,現実を受け入れるのが辛いので,生きるために自然に子どもはメルヘンの世界といった架空の世界に入り,自分を癒す行動があるといったものである。二つ目として,知らず知らずのうちに,子ども時代の体験が,大人になっても,子ども時代と似た体の反応をする場合があるというものである。

最後に,親自身の子どもに対する意識や,子どもたちの言動について見つめ,受け止めることの重要性ついて話し合った。

なぜ子どもは保健室通いをするのか,なぜ子ども達はこのような言動をとるのか,常に私たち大人は子どもを見守る際には,「なぜなのか。」「何で。」といった疑問や視点を常に持つことが大切であるということで,今回のディスカッションは終了となった。