2018(平成30)年5月グリーフワークかがわ
ニュースレター第169号(HTML版)

2018(平成30)年6月12日 グリーフワークかがわ広報部

◆新人カウンセラー これからを見つめて◆


私は、2018年2月にグリーフワークかがわの認定を受けました、カウンセラーの吉田と申します。まだまだ実践には程遠く、現在は、毎月一回の勉強会に参加しております。

今年度は、『子どもの悲しみによりそう・喪失体験の適切なサポート法』という文献を読み進め、ディスカッションを行っております。4月はこの文献を読み進めるにあたり、花岡会員より、『子どもたちのグリーフケア~学校と地域の連携~』の実例報告を頂き、5月より勉強会開始となりました。今回は、私のグリーフワークへの思いが伝わりますように、私が勉強会を通して感じたことを、皆様にお伝えしたいと思います。

人は喪失に直面する。子どもの場合も同じである。いつもと変わらず生活をしていても子どもの心の中には喪失がある。認定カウンセラーはもちろん、学校現場や地域がそのことを知り、理解し、対策を講ずることが重要である。不登校になってからの問題解決は、どれほどの時間がかかるか改めて考える必要がある。

子どもと接する際の注意点を二つ挙げる。

一つ目は「親を亡くしたのにしっかりして偉いね。」といった大人の優しい言動がある。

私達は幸せな感情は肯定的に認められているが、その一方で悲しみや痛み、否定的な感情は正常で自然なものであるにも関わらず、ほとんど認められていない。よって、そういった考え方を受け継がれた子どもは「泣いてはいけない。強くいなければ。」と感情を封鎖し平静を装った演技をする。そして、泣きたいのに泣けないといった弊害を長期に亘って及ぼす場合がある。だからといって、泣いてよいという単純なものでは決してない。知らず知らずのうちに泣いてはいけないという立場をとってしまう、立場に立たされてしまうという点について注目することが大切だと学んだ。

二つ目は喪失体験後の子どもに起こる無感覚や食事と睡眠のパターンの変化である。それらは正常で典型的なものであり、よって大人はその行動が病気であると、すぐに判断してはならない。

最後に、私達大人は、子どもと接するとき、ハロー・グッバイが大切であると私は考える。「はじめまして。こんにちは。」、「ありがとうね。さようなら。」といったことである。そうすると大人も子どももお互いにペースを乱すことなく見守り合うことができる。そして大人と子どもは今ある喪失の現状にしっかりと向き合い、その先へ、さらに先へと共に歩んでいくことができるのではないかと考える。

改めまして、今、学習の時ですが、先輩達を目標にカウンセラーとして一歩ずつ進んで参りたいと考えております。今後とも皆様、宜しくお願い申し上げます。


グリーフカウンセラー 吉田亜紀子



◆ひまわりミーティング◆


~子どもの喪失体験をサポートするには~


昨年度、グリーフワークかがわでのモデル事業として試験的に始まったひまわりミーティングですが、本年度からは一事業としてスタートする運びとなりました。

グリーフワークかがわでは、主に死別という喪失を経験された方のグリーフワークのサポートをする事が多いですが、グリーフは勿論大人に限って現れるものではありません。小さな子どもに子どもであってもそれぞれに喪失を経験し、大人とは違った反応、表現でそれらを表します。また、子どもは大人のように自分の心身の状態をはっきりと言葉で表すことが出来ない為に、近くにいる大人はそれらに気付かない事がままあります。

ひまわりミーティングは、そのような「喪失を経験した子どもたち」にどのようなサポートをすればよいかを悩んでいる親・保護者の方に、お互いに経験や悩みを話し合ってもらえる場として開催されています。

死別に限らず、引っ越しや転校などでの生活環境の変化、親の離婚・再婚などでの家庭環境の変化、ペットの死や、場合によっては大事にしていたおもちゃがなくなった等、様々な事が喪失経験として挙げられます。大人であっても喪失を経験した場合は色々な反応が心身に現れ、自身でも「自分は今悲しんでいる」という事を自覚し、また周りにそれを伝える事が出来ますが、子どもにおいては時には自分が悲しんでいる事自体に気付いていない事もあります。また、周りの大人がそれに気付く事がない場合は、単に「成績が落ちた、怒りっぽくなった」など、子どもの表面的な変化にのみ目が行ってしまい困惑してしまいます。またそのような状況でどこに、誰に、どのように相談するかも分からない事もあるかと思います。ひまわりミーティングは「子どもがひどく落ち込んでいる・悲しんでいるようだけれど、私はどうしてやれるのだろうか。○○があってから子どもの様子が前と違って来た。どうしてやればよいのだろうか。」など、大人同士が経験や悩みを話し合い、何かヒントを見つけられれば、という思いから生まれました。

  • violetリボン

昨年11月から試験的に毎月第1日曜に高松男女共同参画センターで開催していますが、まだまだ十分認知されるには至っておらず、現在も広報に力を入れている状況ですが、それでも少しずつ広がればと今年度も毎月の開催としています。今までに参加頂いた方の年代、お子様の状況もバラバラで、本当に様々な原因で様々な状況に変化しているのだと実感しています。また、参加者の方がお話しされる中、ご自身で何かに気付かれるという場面も少なからずあり、このような場で言葉にする事によって、自身の感情を整理する事も必要なのだとも感じました。

グリーフワークかがわでは「子どもの声が聞こえますが」というテーマのもとに、毎年3月11日から1週間を子どものグリーフワーク週間として2017年からヴァイオレットリボン運動も行っています。ひまわりミーティングを開催する事で、喪失を経験した子どもをサポートする大人の足場を先ずしっかりとしたものとし、そこから子ども自身へのサポートも十分に行っていこうと励んでいます。

グリーフワークかがわの新しい事業としてのひまわりミーティングにつきましても、他事業同様に応援頂けますようお願い致します。

グリーフカウンセラー ローマ真由子


ヴァイオレット・リボンについて

子どもの喪失体験が,子どもの心に与える影響への人々の無関心を払拭し,悲しみの中にある子どもを支えるために,子どもをとりまく環境や社会を変えることを目的としたアウェアネス・リボンです。

紫外線(ultraviolet)は,波長が可視光線より短い不可視光線の電磁波です。子どもの悲しみが,不可視化されることなく,せめて可視光線の中でも最も波長の短いvioletのところに置いて,可視化できるようにしておきたい,そういう願いが込められています。

NPO法人グリーフワークかがわ


◆リビングwithグリーフ◆


内省なき反省

花岡 正憲


心理学では,自分の意識体験を自ら観察することを内省(introspection)と言う。精神を集中して心の内に自己の本性や真理を観察し,修養や医療にも用いられる内観も内省を基本とする。

自分の行為の間違いに気がついたとき,人は,何よりも自分にとって大切なものが失われたという思いから,謙虚で内省的になるものである。

5月6日の日本大学と関西学院大学とのアメリカンフットボール定期戦で,ボールを持っていない関学のクオーターバックの選手に対する悪質なタックルをして怪我をさせた日大アメフト部選手が22日会見を開いた。

「たとえ監督やコーチに指示されたとしても,私自身がやらないという判断ができずに,指示に従って反則行為をしてしまった」「真実を明らかにすることが償いの第一歩だとして陳述書を書いた」と自分の弱さを認め,アメフトを今後続けていく権利はないと反省の弁を述べた。自分の過去の行為について考察し,批判的な評価を加える反省には,自己変革が伴う。

このところ,私たちは,政治家や権力者の反省の場面に何度も付きあわされてきた。

真摯に反省するとしながら,なんら悪びれることなく,詭弁を弄したり,開き直ったり,人ごとであるかのような論評を加えたりする。自己を深くかえりみることがない貧弱な言葉から伝わってくるのは,権力を持った大人の嘘と保身である。

見栄や世俗的な欲望など,失いたくないものを多く纏ってしまった大人たちは,真実に向きあうことが難しい。これ以上の不利益や損失を避けたいという,さらなる喪失を恐れているからである。

ストア派の哲学者で,40歳の時第16代ローマ皇帝(161年~180年)を継承したマルクス・アウレリウスは,内面の自省を文章にして,次のように述べている。

「カエサル(皇帝)的にならぬよう,その色に染まらぬよう注意せよ。なぜならそれはよく起きることなのだから」「もしある人が私の考えや行動が間違っていると言うことを証明し納得させてくれることができるならば,私はよろこんでそれらを正そう。なぜなら私は真理を求めるのであって,真理によって損害を受けた人間のあったためしはない。これに反し自己の誤謬と無知の中に留まる者こそ損害を蒙るのである」(『自省録』神谷美恵子訳 岩波文庫 2007)

清廉な生き方を続けた哲人君主アウレリウスの『自省録』には,人間の栄華がいかに空しいものであるか自覚せよという自戒の言葉を随所に見ることができる。

とりわけ高いモラルを求められる政治家や権力者には,日頃から自己を深くかえりみる内省が欠かせない。権力維持に恋々とすることなく,真理を前にして身を引く謙虚さが求められる。


(グリーフカウンセラー 精神科医)
2018・5・31



◆2018年5月13日 第119回理事会◆


《審議事項》

第1号議案

2017年度事業報告と収支決算に関する事項

事業報告書案と収支決算案について説明と内容の確認がなされた。5月15日に監査を受けることする。

第2号議案

2018年度事業計画と収支予算案に関する事項

事業計画書案と収支予算案について説明があり,共同募金助成事業の増額,ホームページ管理委託費,モデル事業「喪失を経験したこどもの親・保護者の支援」の終了,冊子発刊の諸経費について確認と修正を行った。事務局長は理事長である杉山がつとめるため,役員報酬120,000円と定め,総会で承認を得ることとする。

第3号議案

平成30年度(平成31年度事業)香川県共同募金会テーマ募金に関する事項

5月31日が締め切りとなっている標記募金は,目標額を50万と定め,事業計画は2017年度(平成29年度)のものに準じることで了承された。

第4号議案

冊子の発行に関する事項

冊子「喪失の危機を克服するためのハンドブック~グリーフワークのすすめ~」の改訂作業に取り組んできたが,現在の草稿の段階で,部分的改定にとどまらず,内容的に拡充されたものになっているため,目次構成を見直し新書籍として発刊することで了承された。また書籍タイトルとして議論があり,理事会案を編著者に提案してみることで了承された。

第5号議案

「ゲートキーパー普及啓発事業」への技術援助に関する事項

香川県精神保健福祉センターから,標記事業への講師派遣の依頼があり,受諾の方向で講師並びにアシスタントを調整することで了承された。



◆2018年5月20日 第67回 認定カウンセラー会議◆


  • カウンセリングの現場での状況報告と課題について
     4月の相談事業について報告があった。


【勉強会】


担当:吉田亜紀子

使用文献:
「子どもの悲しみによりそう・喪失体験の適切なサポート法」
ジョン・ジェームス、ラッセル・フリードマン、レスリ―・ランドン著
水澤都加佐、黒岩久美子訳
2014年大月書店

解説の概要:

この本では,最初に喪失に関する神話が6つ採り上げられており,今回はそのうちの二つの神話「泣いてはいけないという神話」「悲しみを置き換えるという神話」についてディスカッションを行った。また,前回の勉強会で取り上げた「子どもたちのグリーフケア~学校と地域の連携~」について,今回の二つの神話を当てはめてディスカッションを行った。

今後の勉強会担当は「パート1第4章」から「パート1第7章」までを吉田が担当することとなった。