2018(平成30)年2月グリーフワークかがわ
ニュースレター第166号(HTML版)

2018(平成30)年3月23日 グリーフワークかがわ広報部

◆技術援助 ゲートキーパー普及啓発事業のご報告◆


香川県精神保健福祉センター主催の自殺予防啓発活動の一環として、香川県学校薬剤師会からの依頼によるゲートキーパー普及啓発事業に技術援助を行ったので報告する。

講演会場は新築移転の香川県立中央病院から一段さがり道をはさんである香川県薬剤師会朝日町会館。駐車場は入りやすく会場は2階大会議場、照明、音響、机、椅子も真新しく機能的。前日の厳しい寒さ程ではないが木曜日の夜7時、対象は薬剤師、参加は30名であった。

先ずは香川県精神保健福祉センター職員から精神保健福祉センターの概論、自殺者の状況、統計、傾向などの説明があり、自殺予防対策として「ゲートキーパー」の解説があった。ゲートキーパーとは「命の門番」ともいわれ「気づき」「声かけ」「傾聴」「つなぎ」「見守り」5つの心得、役割がカギとなる自殺予防対策、その上で相談機関・医療機関など専門家につなぐ心得も重要な役割である。

最後に自殺対策キャンペーンソング、ワカバ「あかり」のアニメ上映。〜どうか どうか どうか 小さな 小さな あかりでも きっと誰かを照らせるんだ〜・・・・・アニメ終了後に精神保健福祉センター職員は「ゲートキーパーとしての小さなあかりを灯して欲しい」と結んで終わった。

講師 杉山は、精神保健福祉センター職員の「自殺の現状」と「ゲートキーパー普及啓発」を聞き終えた参加者にグリーフワークの視点からゲートキーパーの意義について解説を行った。我々は人生でさまざまな喪失を経験し、それに伴う悲嘆の過程を経験する。この体験は人それぞれ受け止め方、あり方、過程などもさまざまである。そして、この過程を辿る中でときには心の危機に陥り、自殺を考えることもある。周囲の「ゲートキーパー」的発想と動きが当事者の悲嘆や喪失体験を自身が受け入れ、乗り越える(ワーク)手助けとなると、多様な事例を述べる。

サポートの糸口になるのは、家庭・学校・会社・地域の中にある日常会話、挨拶、雑談から始まり、苦しい思いを「聞いて貰える」「打ち明けても大丈夫」となれば信頼が生まれ、相互会話の中で自己肯定感とともに自尊心が回復する。その結果、自殺という行動から距離をとれるようになると解説する。

人間関係の中で「雑談」「もう一言、声をかける」ということの有意義な力を説き勧め、そして、この小さなあかりを灯そうと呼び掛けた。又、ファクトシート「自殺に関する神話 10の間違い」(*認定NPO法人マインドファースト発行)を使い自殺に関する誤解や曲解の間違いを正し、自殺対策の具体的方法を理論的に解説した。要所で隣同士等3〜4名のグループを作り「自殺」に関して議論の時間を作った。参加者から「人間関係は急には作れない。日々の生活の中であいさつとかが大切」という発言があった。社会保障制度的な枠にある「ゲートキーパー普及啓発」を理論と多様な視点、身近なイメージで教えられた参加者は活発な議論となった。

2時間と限られた中で「自殺」「自殺予防」の分析がありました。講演の中で「・・・死にたいのではない、此の『苦悩』から逃れたい・・・」との主旨がありました、この「苦悩」は私だと思いそこから逃れるために自死を選ぶ・・・。「苦悩」はほんとうの私なのか。「苦悩」を感じる私の心は止めることは出来ませんが、しかし、だからといって、私の心が生み出すモノに支配され自死を選ぶのか・・・。

「私」とは「苦悩」の正体、本性とは?・・・と深く考えました。


認定NPO法人マインドファーストからファクトシート4種「自殺に関する神話 10の間違い」「大切な人を自殺で亡くされたあなたのために」「自殺を考えている人とその家族や友人のために」「若者を自殺から守るために」)の提供をいただいた。


2018年2月21日

グリーフカウンセラー 童銅啓純



◆リビングwithグリーフ◆


野球からホームランがなくなる日

花岡 正憲


かつて読売ジャイアンツに国松彰と言う選手がいた。一度だけこの選手のプレイを球場で見たことがある。それまで,投げたボールは,放物線を描いて相手に届くと思っていたが,ライナーのスローイングに感動した記憶がある。長打力はなかったが,強肩俊足の野手で,1970年代までジャイアンツの最盛期を支えた。

しかし,時代は高度経済成長期にあり人々はさらなる強い刺激を求めていた。巧打や野手の美技が注目されることは次第になくなって行った。長打力のある選手に注目が集まるON時代を経て,近年は,投手の時代である。

2000年シドニーオリンピックからプロ野球選手の参加が可能となったが,2012年ロンドンオリンピックの正式種目から外された。2020年東京オリンピックでも正式種目としては採用されず,開催都市提案の追加種目として実施される。

1896年,アマチュアリズムを基本として,9競技で始まった近代オリンピックは,今日,お金のかかるフェスティバルとなり,開催国として候補に名乗りを上げる国も少なくなっている。近代オリンピックは衰退期に入っている。

古代のオリンピックは,紀元前776年にはじまり,競技は,短・中・長距離走をはじめ,レスリング,ボクシング,戦車競走などが行われていた。しかし,次第に激しさを増し,武器も登場するようになった。結局プロ選手や剣闘士は参加できなくなり,第293回をもって幕を閉じている。加熱するオリンピックの衰退と野球が重なって見える。

「より速く,より高く,より強く」がオリンピックのモットーとされる。オリンピックの衰退は,オリンピックだけでなく,スポーツのあり方を見直す良い機会でもあろう。

最近,ある新聞で高校野球のあり方を考える特集が組まれていた。スポーツを通した人間的な成長や郷土愛が育まれるという一方で,野球だけの特別扱いや部活指導の問題が論じられていた。

今日,野球は,投手と長打者の対決,言わば三振かホームランかの対決の場になってしまっていないか。全員が役割を持ちながら一致団結して対処することを「全員野球」と呼ぶ。これは,野球が,バランスが良くないスポーツであるという反語ともとれる。

とりわけ投手獲得に過熱気味なプロ野球が高校野球のあり方に影響を与えている面は否めない。

先の新聞記事のアンケートでは,高校野球の魅力として1位が「ひたむきなプレイ」となっており,「ヒーローの出現」に魅力と感じるものは最下位である。一般の野球への期待とプロ野球界の動向はずれたものになっている。

一度,野球そのもののルールを見直すことを考えてみる時期ではないだろうか。例えば,ホームランゾーンに入った打球もファウルとみなす大きなルールの変更である。これまで興奮させたものがなくなることには抵抗があろう。果たしてホームランがなくなった野球を人は見なくなり,プレイする人も少なくなるだろうか。

何ごとも祝祭的な興奮に引きずられると,本来の大切な価値が損なわれて行く。新しい価値を生み出すためには,脱価値化と再生と言う視点が大切である。


(グリーフカウンセラー 精神科医)
2018・3・18



◆2018年2月11日 第116回理事会◆


《審議事項》

第1号議案

2017年度グリーフワーク・デーに関する事項

3月11日(日)10:00~13:00 JR高松駅前にてグリーフワーク・デー街頭キャンペーンを行うこととし,チラシ作成,アウェアネスリボンの作成と発送準備作業を3月1日に実施すること,プラカードのキャッチコピーは昨年度同様のものを使用すること,道路使用許可の申請を北署に行うことで了承された。

第2号議案

事務局員確保に関する事項

会計担当理事から役割の詳細が説明され,外部委託も含めて今後の会計・事務局担当者について検討した。会計担当者は会計の事務作業だけではなく窓口業務も兼ねており,事業についての知識を有する会員の中から人材確保を目指すこととして今後も検討することで了承された。

第3号議案

2017年度事業報告と2018年度事業計画案に関する事項

来年度事業計画について,普及啓発事業では引き続き公開セミナーを会員の中から講師を募り実施していくこと,共同募金についてはテーマ募金の金額を本年度の30万円から50万円に増額して応募予定とすること,具体的な2018年度事業計画案については来月3月の理事会にて提案事項とすることで了承された。

第4号議案

モデル事業「喪失を経験した子どもの親・保護者グループ」ひまわりミーティングに関する事項

第5回の実施が終了したひまわりミーティングについて,夛田副理事長より実施状況が報告され,本年度同様第1日曜日の開催予定で計画していくこと,今月2月22日のワーキンググループで詳細を検討予定することで了承された。

第5号議案

冊子改訂に関する事項

「喪失の危機を克服するためのハンドブック」改訂版について7桁のISBN取得予定とすることで了承された。

第6号議案

公開セミナーの広報に関する事項

公開セミナーのチラシ案内発送先が増えている件で,1月2月はモデル事業の関係もあり広く周知を行ったが,次回のものからは従来の発送先一覧を使用することで了承された。

第7号議案

「自殺予防土曜ホットラインかがわ」に関する事項

土曜ホットライン担当者についてグループミーティング同様年間の担当者制とすることと新規担当者のための研修機会を確保することが提案され審議された。ホットライン担当者については現在同様月間の担当者を前月に募る方法を継続し,研修機会については,認定カウンセラー会議後の勉強会や実務者研修など従来の研修機会を活用していくことで了承された。



◆2018年2月18日 第64回 認定カウンセラー会議◆


【議題】

  • 2017年度グリーフワーク・デーについて
     理事長から街頭キャンペーンについて説明があり,質疑,確認が行われた。(理事会報告を参照)
  • 募金活動について
     平成29年度共同募金(平成30年度助成事業)テーマ募金について,現在までの寄附金状況の報告があった。
  • その他
     3月18日(日)10:00~11:30に,今年度新たに認定されたグリーフカウンセラーも加え拡大会議を行うことが決まった。


【勉強会】


文献:さくとさようならーきょうだいを亡くしたマナのお話

発行 公益社団法人被害者支援都民センター 2015年3月発行

担当:杉山洋子

第4章~第8章

  • 第4章から第8章までの内容について解説を行い質疑を行った。喪失を経験した時に,子どもも親もそれぞれが複雑な気持ちを抱え,様々な感情は変化もする。どれも自然で大切な過程であるが互いにくみ取ることが難しいこともある。「死」と向き合い痛みを体験し成長する過程を具体的な場面で解説を行った。

質疑内容

  1. この冊子をどういう場面でだれが読むことが有用か。
  2. 挿絵をみると,子どもの背中に手をあてたりボディタッチをしている場面がある。ボディタッチは治療的に効果があるかどうか,エビデンスが示されているかどうかなど,それぞれの立場や経験などを話し合った。