2017(平成29)年11月グリーフワークかがわ
ニュースレター第163号(HTML版)

2017(平成29)年12月8日 グリーフワークかがわ広報部

◆第29回グリーフワークかがわ公開セミナーご報告◆


テーマ「生き方が逝き方」~上手に生き、上手に逝く~スマートエイジングの勧め

最初にグリーフ、グリーフワーク、グリーフワークかがわについての説明がありました。

そして、以下の内容について詳細なデータを使った分かりやすいお話がありました。

  • 日本人の死生観について(宗教による死生観の違い、葬儀、お墓についての考え方の変化、死生観を持つようになるきっかけは何か)。
  • 介護と家族の最期について(エリザベス・キューブラーロスの死の受容の段階、死後の事、平均余命について)
  • スマートエイジング(順応加齢)について(どう生きるか、死をどう迎えるかは表裏一体である)
  • 日本人の終末期の現在と過去、そしてこれからの提案と課題(住み慣れた自宅で最期を迎えるために)
  • 様々な疾患によって変わる終末期の症状(例:ガンを患った方の最期に表れやすい症状、そして対処法)
  • エンディングノートについて
  • 最期の時、人は何をチャレンジしなかったことを後悔するか。そして、後悔しないための生き方とは。

グリーフワークかがわ認定グリーフカウンセラーであり、在宅療養支援診療所院長である瀬尾氏の豊かな経験に基づいた充実した内容の講座となりました。

記録者  戸部 幸与



◆リビングwithグリーフ◆


喪失とサバイバル

花岡 正憲


人の一生が喪失とサバイバルの過程であるように,社会や国家にも喪失とサバイバルの過程がある。

フランスの経済学者・思想家で今日のヨーロッパを代表する知性と言われるジャック・アタリは,著書『危機とサバイバル ―21世紀を生き抜くための〈7つの原則〉』(作品社 2014)の日本語版序文の中で,日本の危機的状態につて触れている。

「日本人は,今や未来を予測できず,チャレンジする能力も失い,自国の競争力が風前の灯であることを目の当たりにしている。このような状態において,日本ではかつての輝いていた時代への懐古や回帰現象が発生している」と言う。

日本は,少子高齢化,人口減少,経済の低迷,国際的地位の低下という喪失感の中にある。こうした展望が持てない時期は,焦りや苛立ちや現実否認が,国の姿となって現れやすい。今日の政治的混迷は,こうしたことからくるのだろう。

人は,人生の節目の生き辛さの中にあって,新たに生きていくために,自分史の書きかえが必要になることがある。国が新たな国家像を歴史修正主義の中に求めようとする姿もこれに重なる。しかし,近代史は一国だけで作られるのもではない。意図的に史実を覆す言説を流布することで,未来は開けてこない。

5月29日,日本における「表現の自由」に関する国連特別報告者のデイビッド・ケイ氏が発表した訪日報告書に対し,日本政府は,「多くが伝聞や推測に基づいている」と抗議し,反論書を人権理事会に提出した。

国連人権理事会は11月16日,日本の人権状況の定期審査で世界106か国が意見表明した報告書案を公表した。報告書には,外国人差別や性差別,性的少数者差別などをなくす取り組み,死刑の廃止や一時停止,死刑囚の待遇改善,政治的公平性を求める放送法第4条の「廃止」に関する勧告など,218の勧告が記載された。日本政府は来年3月までにこれら勧告の受け入れの可否について態度表明を求められている。

かつての経済成長期にあっても,ジェンダー・ギャップ,喫煙による健康障害への対応の遅れ,自殺率の高さ,過剰な精神病床など,特に人権,医療,保健などの分野で日本に対する勧告や提言が行われてきた。バッドニュース(悪い知らせ)に目をつぶる中で,世界の非常識が日本の常識となってきた嫌いは否めない。

ジャック・アタリは言う。「日本/日本人がサバイバルするためには,伝統的な文化資産を活用しながらも,時には現在と正反対のことを行なう勇気を持たなければならない。例えば,男女の不平等な職業分担,他国と協調できないナショナリズムなど,未来に有効でない伝統的な観念に立ち戻るのは大きな誤りだろう」と指摘し,今の日本に不足しているのは,革命的に思考し,憤慨する能力であると言う。

個人よりも国益を優先する価値観を捨てきれず,子どもをたくさん産んだ女性を表彰すると言った政治家の言説が,いまだにまかり通る。一敗地に塗れるかのように北の脅威を煽ることが,東アジアの不調和をもたらす。

「保育園落ちた日本死ね」のブログは,大きな反響を呼んだ。展望が持てなくなっている国民が少なくないのであろう。混迷を乗り越え,新たなアイデンティティの構築が問われている。こうした時こそ国際社会からの日本への否定的な評価や国連勧告などに謙虚に耳を傾けるべきであろう。


(グリーフカウンセラー 精神科医)
2017・11・30


◆第30回グリーフワークかがわ公開セミナーのご案内◆


回数 開催日 講師 テーマ
第29回 2017年
11月19日(日)
瀬尾 憲正
(グリーフワークかがわ理事・ グリーフカウンセラー)
「生き方が逝き方」
上手に生き、上手に逝く:スマートエイジングの勧め
第30回 2017年
12月10日(日)
西山 忠明
(グリーフワークかがわ理事・ グリーフカウンセラー)
それぞれのグリーフワーク
第31回 2018年
1月14日(日)
中里 陽子
(グリーフカウンセラー)
ローマ 真由子
(グリーフワークかがわ理事・グリーフカウンセラー)
『小さな命を想うとき』
~ペリネイタルロスのグリーフを通して~
第32回 2018年
2月18日(日)
上野 美幸
(グリーフワークかがわ理事・グリーフカウンセラー)
大切なものを失った子どものこころ
第33回 2018年
3月18日(日)
夛田 敏恭
(グリーフワークかがわ副理事長・グリーフカウンセラー)
葬儀からみるグリーフ
  • 会場:丸亀町商店街カルチャールーム(高松市丸亀町1番地1 壱番街東館4階)
  • 参加費:500円(当日会場でお支払い下さい)
  • 企画運営:認定NPO法人 グリーフワークかがわ
    電話090-6288-1011
  • どなたでも参加できます。事前予約不要

~この事業は2017年度赤い羽根共同募金の助成金を受けています~



◆2017年11月12日 第113回理事会◆


《審議事項》

第1号議案

認定カウンセラー資格継続に関する事項

細則案が示され,資格更新の事項はグリーフカウンセラー資格認定規則第二章(資格要件)第六条 第3項として追加することで了承された。

第2号議案

平成29年度共同募金(平成30年度助成事業)テーマ募金に関する事項

夛田副理事長が香川県共同募金会に対して,テーマ募金の寄付で得られた資金の範囲で,2018年度事業の一部を実施することで問題がないとの確認を取った。今後のスケジュールは11月15日に夛田副理事長が共同募金会の連絡会に出席,11月末を目途にチラシの完成,カガミ文の作成,チラシ発送先(寄付依頼先名簿)の作成を行なうことで了承された。

第3号議案

モデル事業「喪失を経験した子どもの親・保護者グループ」ひまわりミーティング第に関する事項

第1回の開催状況を踏まえ,11月16日のワーキンググループにおいて,本事業の周知のあり方について協議を行うことで了承された。

第4号議案

インターネット管理依頼先に関する事項

2018年度の契約についてAIYAシステムとの協議を行うことで了承された。

第5号議案

会費未納者への対応に関する事項

会費未納者への退会確認並びに納入依頼について審議し,納付期限,会費未納総額と明細を明記し,納入依頼することで了承された。

第6号議案

丸亀町カルチャールームを会場とする行事の鍵管理に関する事項

理事長から11月から2018年3月までの行事と当番表原案が示され役割を明確化した。

第7号議案

認定カウンセラーの名刺に関する事項

認定カウンセラーの名刺テンプレートが示され,グリーフカウンセラーとヘルプラインカウンセラーの種別,QRコード,相談受理電話番号を明記することで了承された。



◆2017年11月19日 第61回 認定カウンセラー会議◆


【議題】

  • モデル事業「喪失を経験した子供の親保護者のためのグループミーティング」について(主担当 ローマ真由子説明,質疑)
    11月5日に行った第1回について報告があった。当日は夛田,ローマ,上野が担当した。参加はなかったが,現場で実際にテーブルなどの設営をしたり,進行の仕方を確認したり,時間の流れを実感したりできた。
  • カウンセリングの現場での状況報告と課題について(西山コーディネーター説明,質疑)
    予約電話への問い合わせも増えている。最近は対面型相談の申し込みもあった。
  • 広報について
    公開セミナーなどの行事について,会員から個人的なフェイスブックなどで紹介すると反応がある。
    会員がそれぞれのネットワークで会の活動をPRすることとともに,フェイストゥフェイスで対話をしながら事業を理解してもらうことが時間はかかるが実りが多い。
  • 香川県共同募金会2017年度テーマ募金について(ローマ真由子,杉山説明,質疑)
    1月から3月まで募金活動を行う。11月30日にチラシが完成するので,12月5日,6日に夛田副理事長が相談室で待機し,会員にチラシを取りに来てもらいたい。夛田副理事長から会員に呼びかけを行う。
  • 勉強会のテキストについて(ローマ説明,質疑)
    次回から「さくとさようなら」をテキストとして勉強会を行う。
    勉強会は一回1章ずつ担当を決めて,本編と解説を読み進める。第1章は瀬尾さんが担当する。
  • 自殺予防キャンペーンについて(西山説明,質疑)
    毎年9月にある自殺予防週間に合わせて,GWKとしても自殺予防キャンペーンを行ってはどうか。GWKの相談の窓口を紹介していきたい。