2016(平成28)年7月グリーフワークかがわ
ニュースレター第147号(HTML版)
2016(平成28)年8月12日 グリーフワークかがわ広報部
*グリーフワークかがわ会員からのメッセージ*
「グリーフワークとの出会い」
看護師の私は、20代の頃から人生の最期を身近で感じてきました。未熟な私なりに精一杯、旅立ちの時間を見届けてきたつもりでした。しかし、旅立つまでに様々な喪失体験があったはずです。
グリーフワークかがわでグリーフについて教わるまで、亡くなること以外の喪失について強く意識することがなかったというのが正直なところです。今は残念で仕方がありません。 もっと早くグリーフについて真面目に勉強していれば、気丈に振る舞いながらも内心苦しんでいた私の周りの人たちが、救われたかもしれません。旅立つ時にもう少し楽な気持ちだったかもしれません。 闘病を支えたご家族も、発病した段階から様々な喪失体験に直面していたのです。そこにもっと寄り添うことが出来たはずなのに…。
グリーフワークかがわの講座に参加したのは、ご遺族のケアの必要を感じていたからでしたが、それ以前に浅はかだった自分を思い知ることとなりました。グリーフは日常の中にあるものだということ。死別だけに限られたものではないということ。これを知ろうとせずにここまで来てしまったこと。
このように講座を通して重大な気づきと学びがありました。グリーフワークの支援者であるには数々の経験と自己研鑽が求められることも肌で感じられました。まだまだ勉強を始めたばかりではありますが、今の自分なりにグリーフワークについて考え、携わっていきたいと思います。そして、もっともっとグリーフワークについての正しい知識と支援者が広がり、誰かが誰かのグリーフに気付いて寄り添うことが自然になされる、そういう社会になってほしいと思っています。
グリーフワークかがわ認定グリーフカウンセラー 林 英里果
◆リビングwithグリーフ◆
スティグマ~分断される社会~
花岡 正憲
7月26日,相模原市の障害者施設に刃物を持った男が侵入し,入所者が首を切られるなどして,19名が死亡,26名が重軽傷を負った。事件直後の情報が限られている段階で,容疑者に精神科への措置入院歴があったことが明らかになったために,国は早々に措置入院後のフォローアップと言う方向で検討を始めた。精神保健福祉法の措置入院制度だけの問題といえるのか。まず事件の全容の解明が先であろう。
国の動きとは対照的に,障害者団体は,障害者にお金をかける必要がないと言う社会のひずみが現れていると言った視点で声明や意見を述べている。海外メディアも,襲われたのが障害者であったことに注目している。今回の事件は,容疑者の個人病理に特化できるほど単純ではない。経済至上主義,そして生産性の低い者は,財政を圧迫するという福祉切捨ての風潮の中で起きたヘイトクライムと見るべきだろう。
古代ギリシャ時代以来,烙印を押された人の否定的,屈辱的,不名誉な「記号(mark)」は,スティグマ(stigma)と呼ばれてきた。「記号」には,人種,性,宗教,身体的変形や障害,伝染病や精神疾患などの個人的特性,失業などが上げられる。スティグマは,非寛容な社会の記号で差別の根源とされる。
先の都知事選挙戦では,ある女性候補が,対立候補のことを「政策も何もない人,病み上がりの人を,ただただ連れてくればいいというものではないんです」と非難した。また,与党が推薦する候補者の決起大会では,元都知事がこの女性候補を意識して「大年増で厚化粧の女に(都政を)任せるわけにはいかない」と中傷,会場の笑いを誘った。元都知事は現職の時,重度障害者施設を視察して,「ああいう人ってのは人格あるのかね。手厚い手当をしながら入所者の症状に回復の可能性がない」とも発言している。
「病みあがり」「大年増で厚化粧」など,個人的特性を揶揄する権力者や政治家の言説とマスメディアの無関心は,潜在的な差別意識を誘発し,社会的弱者に対する雰囲気を微妙に変えていく。
スティグマは,社会的孤立,失業,貧困,アルコールや薬物乱用,犯罪,ホームレス,過度の施設収容,病気の回復の遅れなどの原因になると言われる。こうしたスティグマに対抗するために,異議申し立てにより偏見と差別を追放するスティグマ・ウォッチやアドヴォカシー活動(権利擁護活動)など,アンティ・スティグマの取り組みが各国で行われている。
受けを狙った差別的発言が容認されるのは,政治とマスメディアの劣化に他ならない。社会的弱者が,ヘイトクライムのターゲットにされるような社会は,災害や事故に遭遇し不運や逆境にある人たちにとっても住みにくい社会になって行きかねない。
(グリーフカウンセラー 精神科医)
2016・8・10
◆2016年度グリーフカウンセラー養成講座・基礎コース開催のお知らせ◆
- 主催:特定非営利活動法人グリーフワークかがわ
- 期日:2016年10月6日開講6回シリーズ 最終回11月24日毎回木曜日の午後6:30~8:30
- 受講対象:募集定員12名。本講座は,地域でグリーフカウンセリングという視点で相談援助等の実務(プラクティス)を行う方を対象とします。全課程出席可能な方。資格の有無は問いませんが,治療を目的としたものではありません。大切な方を亡くされて12か月を経過していない方は,別のプログラムをご利用されることをおすすめします。受講修了者は,ご希望があれば,一定の条件のもとにグリーフワークかがわでの相談業務を行うことも可能です。
- 問合せ先:電話 090-6288-1011(火,水,木 18:30~20:30)(グリーフカウンセラー養成講座担当楠本)
- 詳細はホームページをご覧下さい https://www.griefwork.jp/
開催日 | 会 場 | テーマと講師 | ねらい |
---|---|---|---|
10月6日(木) 18:30~20:30 |
サンポートホール高松 51会議室 |
・喪失体験 ・悲哀と悲嘆 杉山洋子
夛田敏恭 |
・受講者自身の喪失体験を通して喪失を定義づけ,その特
徴について理解を深める。 ・グリーフを「大切な人との別れ」という視点から,共感的に悲哀と悲嘆を定義づける。 |
10月13日(木) 18:30~20:30 |
サンポートホール高松 51会議室 |
・家族の死 青井恵子 |
・故人の果たしていた役割を理解し,喪失を経験した家族の病理と再統合について学ぶ。 |
10月20日(木) 18:30~20:30 |
サンポートホール高松 51会議室 |
・子どものグリーフワーク
上野美幸 |
・子どもの発達段階に沿ったグリーフの特徴について理解し,そのケアについて学ぶ。 |
11月10日(木) 18:30~20:30 |
サンポートホール高松 51会議室 |
・自殺 ・自殺者遺族のケア 杉山洋子 |
・ポストベンション(事後のケア)と再発防止という観点から未遂者へのケアを学ぶ。 |
11月17日(木) 18:30~20:30 |
サンポートホール高松 51会議室 |
・末期がん患者の看取りと喪失 瀬尾憲正 |
・予想された死に対する喪失について学ぶ。 |
11月24日(木) 18:30~20:30 |
サンポートホール高松 51会議室 |
・グリーフカウンセリングの終結 ・カウンセラー自身の悲哀 花岡正憲 |
・グリーフカウンセリングの意義を再認識するとともに,悲哀の完了について学ぶ。 ・カウンセラーの限界とコラボレーション(職種間の協働)の重要性について学ぶ。 |
報告
◆2016年7月14日 第96回 理事会開催◆
《審議事項》
第1号議案
グループミーティング会場確保に関する事項
第45回認定カウンセラー会議で提案のあった丸亀町カルチャールームの利用について丸亀町商店街振興組合理事長と事前協議をし,組合理事長宛に施設利用に関する要望書を提出していることが杉山理事長から報告された。回答内容によっては,更に振興組合と協議を重ね,減免による利用ができるよう交渉を図ること,減免が認められる場合は,今年度(平成28年11月~平成29年1月のグループミーティング会場)の施設予約をすることで了承された。
第2号議案
普及啓発事業「公開セミナー」に関する事項
下記①から③のことが了承された。①9月25日,10月23日開催の公開セミナーについて,会場,題目を再検討とし,講師と検討すること。②講師の候補者案としてのアサーティブに関する内容については,今後検討をすること。③チラシの印刷については,昨年同様,AIYAシステムにお願いをすること。
また,杉山理事長から,講師の候補者案として,平成29年度からのモデル事業(新規グループ「喪失を経験した子どもの親・保護者グループ」)とリンクをさせる目的も含め,講師案が説明され,第2回ワーキンググループ会議で内部検討をすることで了承された。さらに,理事も講師をすることとし,10月10日(月・祝日)に上野理事が講師を務めること,会場については,参画センターを第一候補,第二候補として丸亀町カルチャールームとすることが決まった。
第3号議案
新規事業「グリーフワークデイ(仮称)」に関する事項:
審議未了
第4号議案
監事に関する事項
特定非営利活動促進法第19条で「監事は,理事又は特定非営利活動法人の職員を兼ねてはならない」と規 定されている。「職員」とは,必ずしも本法人と雇用関係にある者に限らず,他の法人等から出向して本法人の何らかの職を占める者も含まれる常勤,非常勤を問わないとされている。現在,正会員から監事が選出されていることは適切ではないとの指摘が県からあった。定款で監事は2名となっていることから,2名選出をする必要があること,1名は,外部監査をお願いしている生駒氏に個人としてお願いすることとし,もう一名については,会計士,税理士又は行政書士等の有資格者にお願いするのが望ましいこととして次回理事会までに候補者を選出することで了承された。監事への報酬が必要ではあるが,現在,役員報酬に関する規定が定められていないため,新規に作成することとし,花岡理事が案を作成することが決まった。
◆2016年7月17日 第46回 認定カウンセラー会議◆
【報告事項】認定カウンセラー資格認定委員会について
・2016年度グリーフカウンセラー資格認定委員6名が理事会で選出され,7月2日に第1回会議が開催され,互選により委員長は村上典子に決まったこと,7月10日に認定面接と認定会議が行われ,1名の認定が決まったことが報告された。
【審議事項】
1. グループミーティングの11月以降の会場について
前回の認定カウンセラー会議で提案があった丸亀町カルチャースペースについて丸亀町商店街振興組合との協議等の経過について理事長より報告と質疑が行われた。
「身近な人をなくした方のグループミーティング」については,カルチャースペース1を使用するこ ととする。年度ごとの申し込みが必要があり,まず2017年3月までの申込書を提出する。利用方法について,スタッフ用のマニュアルを作成することと,利用者用の広報の方法を検討していく必要がある。
2. 寄付プロジェクトについて
第1回プロジェクト会議報告を行った。第2回は8月18日(木)19時から参画センターにて開催予定である。
3. カウンセリング現場での状況報告と課題について
5月28日に実務者研修で事例検討を行った事例について,その後,事例検討を行ったことによってホットライン担当者で共有し,統一した対応をしているが,課題は残る。さらに事例検討を行うことが提案された。
【勉強会】
・クライシス・カウンセリングハンドブック 第7章 殺人と暴力 担当者:瀬尾憲正
暴力による負の連鎖を断ち切るために必要なことは何かについての議論があった。関係者のケアのためにはどういうスキルが必要であり,スキルを身につけるための具体的方法についての示唆があった。
勉強会の文献について,次回の会議で決定する。テーマは,モデル事業と関連する内容が望ましい。