2016(平成28)年6月グリーフワークかがわ
ニュースレター第146号(HTML版)

2016(平成28)年7月10日 グリーフワークかがわ広報部

*グリーフワークかがわ会員からのメッセージ*


「私のグリーフワークとの出会い、そして今思うこと」


当時,私は主人を突然亡くしたばかりでした。当たり前だったことがどれほど幸せだったかを思い知る日々。自責の念,後悔,寂しさ,不安。世の中は昨日と同じなのに,自分だけは昨日とはまるで違う,世間とのギャップ。後を追いたい気持ちをなんとか抑えられたのは私が母親だったから。自分一人になれる空間である通勤の車では毎日泣き,それでも私はお母さん,「しっかりしろ!」と自分に言い聞かせ,その頃の唯一の楽しみは『死別ブログ』を読みあさること。そんな時,世の中に『グリーフワーク』というものが存在することを知りました。

でも私が調べても東京などしかヒットせず,それは遠い存在でした。勇気を出して,自分が勤める診療所の院長に尋ねてみました。そして『グリーフワークかがわ』に出会うことが出来たのです。

グループミーティングに参加しました。そのことが私に革命を起こしたと言えます。私だけではなかった・・この人もあの人も,辛い思いを抱えながらも頑張って生きている・・と思えたこと。それまでの暗いトンネルの中にも一筋の光が差した思いがしました。その時,私と同じように大切な人を亡くした人に寄り添えたら。私が気付けたように何か,きっかけになれたら・・とカウンセラーを目指す気持ちが沸き起こったのです。それはまた,私自身の生きる力にもなりました。『グリーフワークかがわ』との出会いがなければ,今でも私は生きる屍だったのかも知れません。

まだまだ,私はグリーフワークの真っ只中にいます。私は再びグループミーティングに参加しました。だんだん,故人の話がはばかられる雰囲気,自分と世間の距離感を感じ始めていたから。そこで「関わりが強かった自分だから哀しむことが出来るのだ,自分にしか出来ないのだ」と論されました。参加するまでモヤモヤしていた気持ちが無くなり,心が晴れ,家に帰ることが出来ました。グループミーティングに参加したことで,また救われたのです。

『グリーフワークかがわ』との出会いは私を少しずつ変えてくれました。主人を忘れる日は一日もないですが,悲しみばかりの日々ではありません。笑うことも増えました。悲しみに打ちひしがれて,生きる力も無くしてしまっている人と一人でも多く出会い,一人でも多くの人が前を向けるようになれることを心から願います。


グリーフワークかがわ認定グリーフカウンセラー 神高 由美子


◆リビングwithグリーフ◆


「新しい判断」の条件

花岡 正憲


J.W.ウォーデンは,その著書「グリーフカウンセリング」(鳴澤實監訳 川島書店1995)の中で,グリーフワーク(悲嘆の作業)を妨げるパーソナリティ要因として,常に強い自分を演じなければならないという自己概念や家業等の後継者として無力感や無能感の露呈を回避しようとする自己概念を上げている。

6月1日,安倍晋三首相は,来年4月に10%への引き上げを断言していた消費税率引き上げを再延期することを表明した。その理由として,「中国など新興国の経済が引き続き落ち込んでおり,内需を腰折れさせかねない」と語っている。そして,これをこれまでの約束と違う「新しい判断」と表現した。

金融経済政策の行き詰まりには触れず,外部環境の変化を理由に,大きな方針転換を打ち出したことについては,釈然としない思いを抱いた人も少なくなかったのではないだろうか。

一方,EU残留か離脱を巡る国民投票で離脱派が多数となったことを受けて,残留を支持したキャメロン首相は辞意を表明し,「自分は適任ではない,イギリスには新しいリーダーシップが必要だ」と述べた。

2人の宰相の言説は,政治課題は異なるとは言え,自分にとって何が失われたかに気がつき,それに言及しているか否かと言う点で対照的である。

人生の節目では,次のステージへ歩を進めるために,新しい判断が求められることがある。そのためには,これまでの自分の考え方や生き方について,その限界も含め謙虚に向き合う心の作業が欠かせない。

身の回りのことに想像力を働かせてみよう。

異性との関係が破綻したとき,その経験を次の出会いに生かすことができる人もいれば,対象喪失に伴う悲哀に耐えられず,逃避的に別の異性との関係を求めて行く人もいる。仕事についても同じことが言える。病気などで離職や休職を余儀なくされた時,自分と仕事との関係を見直すきっかけにできる人もいれば,求職活動や復職を急ぐ人もいる。

グリーフワークは,喪失の事実を受け入れることからはじまる。しかし,その過程は必ずしもスムーズに進むとは限らない。失われたものは,外的世界の事象であるが,失われたものとの関係は,内的世界の課題であるからだ。

人間関係や仕事の上での挫折は,それまでの生き方を振り返り,新しく生きて行くきっかけにもなる。しかし,自分の弱点や限界に目を向けるのは辛い作業である。対象を失ったことによる自己愛の傷つきを直視することを回避し,躁的な防衛機制を発動させ,外的世界への適応を急いでしまう。こうして内的世界の課題に向きあうことが先送りされ,不適応が繰り返されるということが起こりがちになる。

喪失は,日々の生活の中にある。新しい判断とは,喪失に伴う自己愛の傷つきから逃避するために,目先を変えることではない。とりわけ多忙な現代社会では,意図して悲嘆の作業に心を奪われる営みが求められると言えよう。

仕事や人間関係の失敗の原因を外部環境に求め,自己愛を満たしてくれる新たな対象を探し続けることでは,心の安定は得られない。

(グリーフカウンセラー 精神科医)
2016・7・8


◆2016年6月12日 第95回 理事会開催◆


《審議事項》


第1号議案

グループミーティング会場確保に関する事項

11月以降の「身近な人をなくした方のグループミーティング」会場について,5月29日に行った認定NPO法人マインドファーストの管理する「オフィス本町」の結果が報告され, 11月から3月までの候補として検討すること,また,新たに立ち上げるモデル事業『喪失を経験した子どもの親・保護者グループ』のグループミーティングの会場候補として今月中に会場見学を行う予定とすること。以上について,次回認定カウンセラー会議で理事長から説明し,議論を行った結果を次回理事会に諮り方針を決定することで了承された。

第2号議案

寄付金プロジェクトに関する事項

寄付金募集の広報活動について下記審議され承認された。①ホームページに掲載する寄付金についての原 稿案はホームページに掲載予定とする。ホームページについてはスマホ対応も含めて内容の整理と更新を行う予定としており,AIYAシステムに再度見積もり請求すること。②寄付金に関するブロシュールは本年度経常費用「消耗品費(印刷製本費)」内22000円を予算として作成準備を進めること。寄付金に関するプロジェクトについては,花岡理事,村上典子理事,植田理事らを中心に,認定カウンセラーのメーリングリストにて活動メンバーを募り6月30日19時より第1回プロジェクト会議を開催する予定とする。

第3号議案

2016年度グリーフカウンセラー養成講座・基礎コースに関する事項

1回企画会議を6月19日の午後に開催することとし,受講者募集案内,講師・アシスタント募集,会場などについて検討し準備を進めることで承認された。

第4号議案

グリーフカウンセラー認定委員に関する事項

年間を通して認定審査ができるように認定委員を選任しておくことで承認された。本年度は昨年度の認定委員の中から選任する。

第5号議案

モデル事業『喪失を経験した子どもの親・保護者グループ』に関する事項

夛田副理事長を中心として第1回ワーキンググループを6月23日もしくは25日に開催することで了承された。

第6号議案

個別面談のときの対策に関する事項

第44回認定カウンセラー会議からの提案事項として審議され,カウンセラーによっては対応が苦手なクライエントが存在することは珍しいことではなく,適宜スーパービジョンを受けるなど研鑽を積み取り組むべきであるとの指針を示した。

第7号議案

認定カウンセラー会議の開催回数に関する事項

第44回認定カウンセラー会議からの提案事項として審議され,認定カウンセラー会議に代わる会議が立ち上がるなど,運営上必要と認められない限り開催回数の削減はしない方針と回答することで承認された。


◆2016年6月19日 第45回 認定カウンセラー会議◆


第44回認定カウンセラー会議から理事会に審議事項として挙げた以下の2議案について理事長から説明があった。


1 個別面接の対策について

苦手なケースの場合は,カウンセラー自身の限界を理解しておくことが必要であり,カウンセラーは常にクライエントとの関係性においてなぜ自分が向き合うのが困難であるかを内省する必要があること,そしてカウンセラーは能力向上のための自己研鑽に努めることが必要である。


2 認定カウンセラー会議の開催回数について

定例会議が開催に至った原点に戻ると,認定カウンセラーから勉強会を含めて現状報告,相談について定期的に持寄る場所が求められたという背景があり現行の会議の開催頻度については変更はしないこととなった。


【審議事項】


1. グループミーティング(以下「GM」と示す)の11月以降の会場について

理事会として,候補の会場について情報収集の結果を会場を見学した結果を報告し,認定カウンセラー会議での議論を踏まえて理事会で審議していくとの説明があった。条件的に,年間を通しての安定的な確保が可能であることと,料金設定と地理的条件で,認定NPO法人マインドファーストが管理する「オフィス本町」が候補として挙がり,5月29日にGM担当者も含めて6名で現地の見学も行った。第95回理事会では2016年度11月以降の会場として「オフィス本町」が望ましいとして認定カウンセラー会議で意見を求め,それを踏まえて次回の理事会で審議することとなった。

新たに,高松丸亀町商店街振興組合の会場(カルチャースペース等)についての提案がなされ,情報 収集し,検討していくこととなった。

2. 寄付プロジェクトについて

6月30日19時から第1回会議を行うこととなった。

3. カウンセリング現場での状況報告と課題について

認定カウンセラー会議からスーパービジョンあるいは事例検討にと繋がることもこの会議の目的の一つであり,現場での課題を会議の中で積極的に発言し,共有して現場と会議と研修が機能していくことが確認された。今年度も実務者研修を積極的に行っていくことで課題解決を目指していく。

4. 2016年度グリーフカウンセラー養成講座・基礎コースについて

10月6日を初日として6回シリーズで行う。第1回企画運営会議が6月19日開催される。

【勉強会】

・クライシス・カウンセリングハンドブック 第6章 死別と悲嘆 担当者:瀬尾憲正

小中高生を対象としたガイドラインの紹介(例;神に召されたとか眠りについたという表現はせずに真実を伝える。)や学級会での開かれた質問(1.訃報を聞いた時,あなたはどう感じましたか?2.家で話し合いましたか?)など,私たちにとってグループミーティングなどの場でも基本となる内容を学んだ。学校での自殺があった場合は現状では臨床心理士の介入は容易ではない。学校側としてはその事実を遠ざけようとする風潮がある。子供のケアが必要とされる背景では,関わっている大人のケアからしなければ,子供の喪失へのケアは難しいということを教わった。